- 廣畑 信二
- HSコンサルティング行政書士事務所 代表
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
前回のコラムで、
取締役には「善管注意義務」というものがあり、
その内容について述べさせていただきました。
実は、「善管注意義務」とよく似た内容の言葉で、
取締役が負うべき義務として「忠実義務」というものがあります。
Wikipedia(ウィキペディア)を見てみると、
この2つの言葉の関係について次のように述べられています。
『忠実義務と善管注意義務の関係については、
言い換えただけと考える同質説と、
取締役に課せられた独立の義務と考える異質説がある。
異質説に立つ場合、利益相反取引の禁止、競業避止義務、報告義務、
お手盛り禁止などは、忠実義務の具体化である。
従来は同質説が通説的であったが、現在は異質説が有力化している。』
つまり、
「善管注意義務」というのは、
『会社に対して、取締役としての一定の注意を払う義務』なのに対して、
「忠実義務」というのは、
『会社の利益を犠牲にして自己の利益を図ってはならない義務』
という異質の義務であるという説が有力である、
ということだと思います。
これに対して、同質説というのは、
会社法第三百三十条の
『株式会社と役員及び会計監査人との関係は、
委任に関する規定に従う(これが、「善管注意義務」の根拠法)』
という委任関係であるというこの規定を受けて、
会社法第三百五十五条で、
『取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、
株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない』
という「忠実義務」の根拠となる規定が、
受任者の「善管注意義務」の会社法的表現として捉えられている、
ということになるのだと思います。
なんか、少しむずかしい話になってきましたね。
まっ、この二つの義務の異質説・同質説の話は、
経営者自身の知識としてはあまり重要ではないことなので、
この辺で説明をやめておきましょう。
興味のある方は、学説や判例などがいろいろと出ているようなので、
その辺を探してみて下さい!
とにかく、「忠実義務」をもう少し分かりやすく言うと、
『会社の利益や成長発展を優先させて行動しなければならない』
ということになるのでしょう。
どちらにしても、「善管注意義務」も「忠実義務」という言葉も、
取締役の基本的な義務をあらわした表現であり、
観念的な言葉であることには違いはありません。
ですので、次回からはもう少し具体的に、かつ、実践的に
取締役の義務と責任について説明していくことにいたしましょう!
このコラムに類似したコラム
取締役の義務と責任について その8 廣畑 信二 - 行政書士(2010/07/29 08:00)
取締役の義務と責任について その6 廣畑 信二 - 行政書士(2010/07/09 20:00)
平成25年改正会社法の要綱その1 村田 英幸 - 弁護士(2013/02/10 13:06)
株主代表訴訟の対象となる取締役の責任の範囲 村田 英幸 - 弁護士(2012/10/01 06:38)
取締役の義務と責任について その9 廣畑 信二 - 行政書士(2010/08/12 08:00)