ＥＭＤＲ事例（小さくて長く続いたトラウマ）

「私、英語苦手なんです！」

これは　モントリオールで４年間　英語の中学へ行き、成績優秀だったMさんの言葉です。話を聞くと　彼女は英語に関する思い出がありました。

「モントリオールに行って1年位経った時のことです。学校の玄関が開くのを　クラスメート達と待っていました。すると　イタリア系の男の子が　君の英語の発音、奇妙だよね。”って言ったんです。私的には　大分　分かるようになって来たな、って思ってたころだったんです。その子に　“こっちへ来てまだ１年だ、とか英語はネイティブじゃない。”って言ったのですけど　英語っていうと　いつもそのことを思い出すんです。」

「だから、私、大学も英語を勉強しなくていい所にしたんです。就職活動のために　英語でディスカッションするコースを取っているけど　他の人のように発言できないし、話せます、って言えないんです。みんな海外で暮らした経験も無いし、あっても１年位の留学だけど“流暢に話せます。”って言うんですね。でも　私言えないんです。」

「では　その記憶をターゲットにしてEMDRをしましょう。」

記憶は写真を取ったように　「一番思い出す場面」、「写真に撮るとしたらどこを撮るのか」をイメージをしてもらいます。

一定のの手順を踏んだ後、EMDRセラピーをしました。

その出来事をどの程度不快に思うのか、を0から10（10が最高に不快）のSUDｓと呼ぶ数字で表現します。

30分後、不快感が8から2に減ったことが確認できました。

10日後、２回目のセラピーに来た彼女に様子を　聞きました。

「驚いたことがあったんです。EMDRの後3日ほどしてあった英語のディスカッションのクラスで　自分から一番始めに発表したの。その後も　ディスカッションに関して自分から提案して　それもびっくりしたの。それにこの間は2で終わった不快感がだんだん日が経つにつれて0に近い１になったの。」

経過を聞いた後、前回の続きからセラピーを始めると、ほかの気づきも話されました。

「今までは　英語を話す前、必ず咳払いをしてたのに　それをしてない自分に気付きました。」

「あの写真がどんどん色あせて　昔、おじいちゃんが持っていたの写真のよう。」

「写真の中に　前は他の生徒も見えていたのに　今はあの男子と自分だけ。」

「写真が　どんどん小さくなっていく。」

最終的には　不快感は0になり

「あんな男子に関わっている暇はもうないです。」

との言葉が聞かれました。