- 河野 英仁
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対象:企業法務
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〜延長期間の計算方法について明確な基準が判示される〜(第5回)
河野特許事務所 2010年3月25日 執筆者:弁理士 河野 英仁
Wyeth and Elan Pharma International Limited,
Plaintiffs- Appellees,
v.
David J. Kappos,
Defendant- Appellant.
4.CAFCの判断
計算式は、
A遅延日+B遅延日−出願3年後のA遅延日−出願人による遅延日
である。
CAFCは、米国特許法第154条(b)の規定に基づけば、B遅延は出願後3年経過後に開始するものであるから、重複した場合にA遅延またはB遅延のいずれか長い方を用いるUSPTOの計算方法は誤りであると判示した。
参考図2はA保証及びB保証を示す説明図である。
参考図2 A保証及びB保証を示す説明図
A遅延は、USPTOの遅延により、サブパラグラフ(i)-(iv)に規定する期限のいずれか一つに合致した場合に開始する。そして、USPTOの遅延停止の措置がとられた場合に終了する。例えば、ファーストOAは14月以内に通知すべき旨規定されているが、14月を超えた場合にA遅延期間は開始し、その後ファーストOAが通知された時点で終了する。参考図1の上段に示すように、A遅延はUSPTOが特定された期限を経過した日から開始する。
一方B遅延は、出願係属期間3年以下を保証するものである。参考図2の下側灰色矢印で示すとおり、B遅延は、USPTOが「合衆国における出願の実際の出願日から、3年以内に特許を発行」できなかった時から始まる。そして、B遅延は特許が発効された場合に終了する。このように、米国特許法第154条の規定に基づけば、B遅延の「遅延期間」は米国出願日から3年後に開始する。
重複した際A遅延またはB遅延のいずれか長い方をのみを用いるUSPTOの計算方法では、A遅延が長いものとして採用された場合、本来出願3年経過後に初めて計数されるB遅延が、遅延が生じ得ない3年経過前から遅延期間が計数されることになる。CAFCはUSPTOの解釈では、明らかに米国特許法第154条の規定に反することから、原告が主張した計算方法が正しいと判示した。
すなわち、A遅延とB遅延とに重複がある場合、遅延期間は
A遅延日+B遅延日−出願から3年後のA遅延日−出願人による遅延日 となる。
(第6回へ続く)
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