住宅断熱基礎講座/基礎断熱の注意点 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家
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住宅断熱基礎講座/基礎断熱の注意点

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住宅断熱基礎講座 05.高気密・高断熱の課題
05-4:基礎断熱の注意点

 さて、基礎断熱を採用する場合、気をつけなければならないことがいくつかあります。

 まず、基礎断熱をした床下空間を室内と考える場合、土台周りに散布される防蟻剤・防腐剤の問題があります。

 防蟻剤・防腐剤は劇薬であり、クレオソート油などの揮発性の薬剤であれば、人の健康を害する恐れがあります。そのため、室内の空間が床下空間と繋がる様な計画、例えば、床下に暖房設備を施したり床下の土間コンクリートに蓄熱して暖められた空気を床ガラリなどで室内に取り込む方式を採用する場合は、土台周りの防蟻・防腐処置には不揮発性の薬剤を用いるか、シロアリに強いひばの心材を用いたり木酢液等の人体に影響のない自然塗剤を考慮する必要があるでしょう。

 シロアリの発生状況はその敷地条件によって相当ばらつきがあるものですが、基礎断熱と土間の防湿コンクリートを施工する場合、床下の地中からシロアリが進入することはなく、基礎の外周部からの進入の可能性に限定されますので、何らかの薬剤を用いなくてもシロアリの被害を防ぐことができます。

 防湿コンクリートを施工しない場合は、防蟻シートを床下の地面に敷くようにします。防蟻シートは薬剤がプラスチックシート(EVA樹脂)の中に練り込まれていて、薬剤の成分が土の中に流失せず、揮発することもないので安心です。

 また、薬剤を土中に散布するタイプのものは土中から地下水へ薬剤が蓄積されて環境汚染の原因となるので、それを防ぐために効果持続期間が3〜5年程度しかありません。しかし、防蟻シートは20年以上効力を発揮することが確認されています。このように基礎断熱の採用に当たっては人の健康に配慮したシロアリ対策も同時に考えておく必要があります。

 次に考慮しなくてはいけないことは、湿気対策です。

 基礎断熱をして床下が密閉状態になると、冬場は室内の環境に近い暖房状態で乾燥していますが、夏場はやはり室温よりは低温の状態で高湿度状態になる可能性があります。北海道では先程も触れましたように夏場の湿度がそれほど高くないのであまり問題は起こっていないのですが、東京以西の温暖地においては夏型結露がこの基礎周りに如実に現れてきます。

 この対策としてはエアサイクルの考え方を取り入れたり、除湿器を設置したり、工法によって様々な対策が講じられていますが、24時間換気を前提に考えれば排気ダクトの一本を床下用に設置するのが最も簡便な方法と考えられます。

 在来工法で外張り断熱工法を採用していれば、床壁は空洞の状態で繋がっているので特に給気口を設けなくても床壁の隙間から室内の空気が自然に吸引されることになります。この場合はわざわざ外気の湿気を呼び込む給気口は設けない方がいいでしょう。

 木炭等を不織布の袋に入れて吸湿剤として用いるという手もありますが、数ヶ月もの間、隙あらば常に侵入してくる夏場の湿気を悉く吸い取ってくれるような効果は期待できません。しかし、最も結露をおこし易い場所で排気と併用することでその効果を助けることはできます。また、木炭は熱すると遠赤外線の効果が期待でくるので暖房のシステムに組み込むというアイデアもあるでしょう。

 このように床断熱、基礎断熱に関わらず、住宅において床下空間というのは以外と厄介な存在であると言えます。それなら床下空間を無くしてしまえばいい、と考えたのが「土間コンクリート床」です。床下空間がないのですから、これまで問題だった床下環境の悪化を懸念する必要がありません。コンクリート土間の上に直接フローリングなどの床仕上げをしてしまえば、床の木工事を省略できますし、西欧風にタイルや石貼りの床にすれば、巧く冬場の太陽を取り込んでダイレクトゲインで床に蓄熱し、パッシブソーラーハウスとしての可能性も見えてきます。

 地盤が凍結しない温暖地では、布基礎ではなくベタ基礎形式にして根切りの土量や以外と値段が嵩む型枠の量を減らすことができるので、床の木工事の省略化と共にコスト削減が可能になります。但し、ここで注意したいのは、設備配管などがそのままコンクリート土間の下に埋設されてしまうとメンテナンスが困難となるため、それなりの工夫が必要となることです。

 台所、便所、浴室、洗面など給排水の必要な諸室を集約し、その下に配管用のピットを設けたり、スエーデン等の北欧の住宅でよくやるような外壁の内側をふかして配管スペースとしたり、あるいは割り切って露出配管にするなど、今まで以上に設計段階でのきちっとした設備計画が求められることになります。しかし、すでに公庫の共通仕様書にも載っている工法であり、今後の住宅における基礎形式として一考されるものと言えるでしょう。