住宅断熱基礎講座/高気密・高断熱が基本 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家
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住宅断熱基礎講座/高気密・高断熱が基本

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住宅断熱基礎講座 04.高気密・高断熱は様々な工法へと向かう
■いずれにしても高気密・高断熱が基本 
 
 この章で色々なシステムについてできるだけ簡潔に述べてきましたが、全体を整理してみると、北海道では「断熱」が必要命題であり、「高断熱」を達成し「壁内結露」を防止するためには「高気密」が必要不可欠である、ということで「高気密・高断熱」が純粋な形で追求されました。

 それに対し、関東以西の地域では、木造在来軸組工法の「壁体内空洞」に着目し、それを積極的に利用することを考えたエアサイクルの流れと、太陽のエネルギーを積極的に活用しようとしたソーラーハウスの流れがあり、いづれも自然と融和し、自然に溢れた生活を快しとする日本人の自然観に添ったものであり、当初は「気密・断熱」という問題には無頓着な姿勢が見られました。

 エアサイクルは自然の力を巧みに利用したアイデア工法であり、ソーラーはまさしくクリーンエネルギーで、自然のエネルギーを積極的に活用しよう、ということに誰しも異論はないと思います。しかし、どんなエネルギーでもそれをできるだけ効率よく活用することが必要であり、「熱を逃がさない」ということはどんなシステムにおいても共通する基本的要件であると言えます。

 こうしてそれぞれ違う方向からアプローチし、誕生した工法のいずれもが最終的には「高気密・高断熱」に行き着き、逆に発想の原点が今では付加価値として存在するようになってきたと言ってもいいでしょう。

 しかし、エアサイクル系の工法も、ソーラーハウスも、「高気密・高断熱」を獲得することでやっとバランスの取れた完成度の高いシステムを作り上げることができたのです。

 さて、それでは数ある工法の中でいったいどれが一番良いのか、という質問が当然出てくるでしょう。しかし、残念ながらどんな条件をもクリアーするベストな工法というのはありません。どの工法にも一長一短あるということです。

 単純な「高気密・高断熱」仕様のものより空調までパッケージ化された複雑なシステムになるほどトータルな性能に対する信頼性は高くなるとは言えますが、当然、コストは高くなりますし、それだけ故障する可能性やメンテナンスの必要性が高まるとも言えます。また、多くのシステムはメーカーや工務店主導の工法であり、複雑なシステムでは特にその傾向は強く、プランニング自体の制約も多くなります。

 結局は「住む人」の価値観やライフスタイル、希望する間取りやデザインなどとの適合性といったものの総合的に判断によって選択されるもの、ということになりますが、実際にはこれ程多くの工法を素人が調べて、比較検討するのは不可能なことと言えます。

 しかし、工務店などでは自社がフランチャイズしている工法で建てた家を、入居前に見学会と称して一般公開することがよくありますので、こまめに足を運んでみるのもいい方法です。
 実際に一年以上住んでいる家の人に話を聞くことが出来れば、具体的に良いところや悪いところが分かるのでなおいいでしょう。

 しかし、工務店主導の場合、あるメーカーのフランチャイズ店になってそれひとつで営業するわけで、数ある工法の善し悪しを客観的に見ることはできず、他社の工法の問題点ばかりをついてくるというのが常です。また、多くは「工法」そのものを売りにしているので、設計を生業にしている設計事務所のようなプランニングやデザインの妙味は味わえません。

 兎に角、冬暖かく光熱費もそれほどかからず、快適に過ごせれば、間取りやデザインにはこだわらない、という人にはハウスメーカーものや工務店がフランチャイズしている保証のしっかりした高気密・高断熱システムがいいでしょう。

 問題はやはり「高気密・高断熱」と「デザイン力」のどちらも欲しい、という場合です。これは決して贅沢な要求ではなく、一生に一度か二度しかない大きな買い物をするのですから、とことんこだわる、というのが本当だと思うのです。

 しかし巷では安かろう悪かろうの建て売り住宅がどんどん売れてゆくのが現実です。日本人の「住むこと」へのこだわりのなさをいつも感じてしまいます。ただ、せめて高気密・高断熱という基本性能を持つことで日本の住宅の「質」の向上を図ってもらいたいものです。

 さて、それでは設計事務所はどうかと言えば、例え高気密・高断熱が得意だというところでも、多くは一度工務店に勧められてやってみたのがなかなかうまくいったということで、高気密・高断熱と言われたらこれしかない、という感じでひとつの工法でやっているところが殆どです。

 しかし、これでは設計の自由度を自ら封じ込めてしまっているようなものであり、あまり感心しません。設計者にとっても工法についての理論的把握と同時に、実際に建った家を調査してみることはとても重要なことであると言えます。

 設計者は、施主が求めている間取りやデザインを煮詰めてゆく段階で、それに相応しい工法を同時進行で考えてゆく必要があります。そのためにはできるだけ多くの工法に精通していることが必要であり、経験も必要になってきます。

 空調まで含めたトータルなシステムであれば、設計の制約がどのようなかたちで現れるのか、事前に把握しておく必要がありますし、自由な設計が可能なシンプルな工法であれば、暖房方式や換気方式も様々な選択肢がありますが、それだけにバランスの良いシステムを構築するにはに十分な検討が必要であり、それこそ経験の積み重ねが必要となってきます。

 ですから、これからは設計者も高気密・高断熱という住宅の「質」を踏まえてデザインに取り組んでいってもらいたいものです。いづれにしてもこれからの住宅は高気密・高断熱化するのであり、高気密・高断熱が基本となってゆくのですから。兎に角、設計者は一度、高気密・高断熱住宅を作ってみるべきです。

 そうすれば、これまで自分が造ってきた家はいったい何だったのだろう、という思いに駆られるに違いありません。それだけ高気密・高断熱住宅の温熱環境は今までの家とは違うのです。
 この快適さを知ると、もう今までのような家を造ろうとは思わないものです。この時から設計者にとっても高気密・高断熱が「いい家」にとっての最も基本的な条件になるのです。そして大事なことは、高気密・高断熱は「手段」にすぎないということです。

 目標はあくまでも「健康で、快適な、住み心地の良い家」を作ることであり、その基本を担う手段にすぎません。しかし、その手段を誤ったら決してその目標に辿り着くことはできないのです。

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