- 河野 英仁
- 河野特許事務所 弁理士
- 弁理士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
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〜実用新型特許権の有効活用〜(第8回)
河野特許事務所 2009年2月17日 執筆者:弁理士 河野 英仁
泉株式会社(日本)
原告-被上訴人
v.
広州美視有限公司等
被告-上訴人
5.結論
高級人民法院は、実用新型特許の侵害を認め、原告の請求どおり、被告Aに対し、イ号製品の即時製造・販売停止、被告Bに対しイ号製品の即時販売停止を認めた。また、被告Aに対し約12万元(約170万円)の損害賠償の支払いを命じた。
6.コメント
本事件は、実用新型特許を有効活用した案件として参考となる。日本では特許出願していたところ、中国では実用新型特許出願に切り替え、しかも、中国用にわざわざ請求項の内容を書き換えて登録を受けている。中国での侵害を予期して複数の独立請求項を設定し、さらに階層的に従属請求項を作成したのである。
実用新型特許は無審査で登録となる反面、後に無効となる可能性が高い。しかも、上述したとおり登録後は実質上請求項の削除しかできない。しかしながら、本事件の如く予め32もの請求項を階層的に作成しておけば、いくつかの請求項は生き残り、有効に活用できるであろう。
発明特許として出願した場合、審査に長期間を要し、また記載不備を指摘され、「権利範囲を実施例に限定すべし」等の厳しい拒絶理由を受けることが実務上多い。本事件の如く、中国競合他社から模造品が販売される可能性が高く、かつ、対象が構造物である場合、発明特許ではなく実用新型特許で権利化することは一考に値する。
その場合、請求項は、無効宣告請求及び請求項の削除補正を考慮して、数多く階層的に作成しておくことが必要となる。また、外観設計特許出願(日本の、意匠登録出願に相当)もあわせて行うことも重要である。実用新型特許権は存続期間が10年と短くなるデメリットもあるが、「迅速・簡便・強固」というメリットが大きく、戦略的に活用することが可能である。
判決 2009年3月18日
(第9回へ続く)
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