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対象:企業法務
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〜実用新型特許権の有効活用〜(第6回)
河野特許事務所 2009年2月12日 執筆者:弁理士 河野 英仁
泉株式会社(日本)
原告-被上訴人
v.
広州美視有限公司等
被告-上訴人
争点2:特許請求の範囲は実施例の記載に限定されない。
高級人民法院は請求項12に対する実用新型特許権侵害を認めた。争点となったのは請求項12(請求項7,11の従属)の以下の部分である。
請求項7「該蓋体はロック機構8を利用し、前記トップバー5を前記ケーシング1上に固定する。」
請求項11「前記ロック機構8は、前記トップバー5上に配設される係合部9と、前記ケーシング1に配設され前記係合部9と係合する被係合部10とを備える」
請求項12「前記係合部9は、前記トップバー5の幅方向に対して対向配設された一対の係合部材12,13を有し、一方、前記被係合部10は前記ケーシング1の対向する開口縁部にそれぞれ配設され前記係合部材12,13に対し係合する一対の被係合部材15,16である」
被告は、イ号製品が請求項に記載のロック機構8を除いて、全ての技術特徴を備える点認めている。
高級人民法院は、請求項12に係るロック機構8は、トップバー5上に配設される係合部9と、ケーシング1に配設され前記係合部9と係合する被係合部10とを備え、前記係合部9は、前記トップバー5の幅方向に対して対向配設された一対の係合部材12,13を有し、一方、前記被係合部10は前記ケーシング1の対向する開口縁部にそれぞれ配設され前記係合部材12,13に対し係合する一対の被係合部材15,16を有するものと認定した。
高級人民法院は、イ号製品のロック機構を以下のとおり認定した。イ号製品は、トップバーの幅方向に対して対向配設された一対の係合部材、及び、前記ケーシングの対向する開口縁部にそれぞれ配設された他の一対の係合部を通じて、相互に係合し、これによってロックトップバーとなる。
その中で、
イ号製品「前記トップバーの幅方向に対して対向配設された一対の係合部材」は、本特許中の「トップバー5上に配設される係合部9」に対応し、
イ号製品「前記ケーシングの対向する開口縁部の他の一対の係合部」は、本特許中の「ケーシング1に配設され前記係合部9と係合する被係合部10」に対応する。
そして、両係合部は係合を通じてロックされる。
以上のことから、高級人民法院は、イ号製品のロック機構は請求項12に記載のロック機構の技術特徴を全て具備すると判断した。
被告Aは、請求項7,11,12にいうロック機構8の構造は実施例及び図5に記載した具体的な形状に限定解釈されるべきであり、限定するとすればイ号製品は技術的特徴を備えず、特許権侵害は存在しないと主張した。
高級人民法院は専利法第59条*10の規定に基づき、実用新型の権利範囲は請求項の内容を基準とすべきであり、明細書中の図面5は具体的実施例に過ぎず、必ずしもその記載をもって限定し、保護範囲を縮小することはできないと判示した。そして、イ号製品は請求項12の技術的特徴を全て備えることから、技術的範囲に属すると判断した。
これに対し、被告Aは現有技術の抗弁(日本の自由技術の抗弁に相当)を行った。すなわち専利法第62条の規定に基づき、イ号製品が現有技術に属する場合、特許権侵害は成立しない。専利法第62条の規定は以下のとおりである。
専利法第62条
特許権侵害紛争において、侵害被疑者が、その実施した技術又は設計が従来の現有技術又は現有設計であることを証明できる場合、特許権侵害に該当しない。
ここでいう現有技術とは専利法第22条第5項に規定されている。
専利法第22条第5項
本法にいう現有技術とは、出願日前に国内外で公衆に知られている技術をいう。
被告Aは、イ号製品は2つの公知文献を証拠として提出し、これらの組み合わせにより創造性がないと主張した。しかし高級人民法院は、専利法第62条にいう現有技術の抗弁はイ号製品が公知の技術であることを要求しており、組み合わせに係る創造性とは無関係であることから、被告Aの現有技術の抗弁を退けた。
(第7回へ続く)
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