住宅断熱基礎講座/自然系断熱材の誕生−2 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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住宅断熱基礎講座/自然系断熱材の誕生−2

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住宅断熱基礎講座 04.高気密・高断熱は様々な工法へと向かう
(自然系断熱材の誕生−1 に続く)

 これらの自然系繊維による断熱材(炭化コルク以外のもの)は、無機質系のグラスウールやロックウールが水蒸気の吸放湿性が乏しく結露対策が大きな問題であったにの対し、吸放湿性、保湿性に優れた素材であるため、防湿シートがなくても壁内結露の心配が少ないと言われています。勿論、防湿の必要がないにしても気密の確保は必要ですから、これまで防湿と気密を兼ねていたシートが気密シートになる、ということですが、今まで内断熱で一番厄介だった防湿の問題がなくなるだけで随分施工が楽になります。本当に結露の心配がないとなれば、気密シートの位置を断熱材の内壁側ではなく、障害物の少ない外壁側に施工しても良いということになります。そのほうが室内の調湿にこの断熱材の利点を活かせることになります。そう考えると、近年外断熱に押され気味の内(充填)断熱も、自然系繊維質断熱材によって巻き返しを図れるかも知れません。

 勿論、こうした自然系断熱材が本当に壁内結露を起こさないのか、といった実証データが乏しいので現段階では断言できないのですが、常識的に考えれば、いかに吸湿性・保湿性に優れていると言っても限度がある訳で、その限度を超えればやはり結露の危険はあるでしょうし、保湿性が高いということは同時にカビや腐食菌が繁殖する危険性も高いとも言えます。いずれにしろ、様々な温湿度条件でどのような状態になるのか、そのデータを早く見たいところです。

 さて、炭化コルクはコルク樫の皮から粉砕し、炭化発泡させて作った断熱材で、もうすでに日本でも使用されはじめており、これも水蒸気の吸放湿性に優れているのですが、ボード状であるためプラスチック系断熱材と同様に外断熱工法に向いていると言えます。しかし、プラスチック系断熱材と同等の厚みで考えると、断熱性能は劣り、東京辺りの温暖地で高気密・高断熱住宅への使用を考えると、その厚みが余計に必要となる炭化コルクは外壁材を支持する上でマイナスに働いてしまうので、その辺の具体的な問題解決が必要になってきます。

 さて、こうした自然系断熱材は、これまで問題になっていた化学物質や燃焼時の有毒ガスの発生がなく、リサイクルができるといったエコロジー面での優れた性質を持っており、自然住宅などのマニアやシックハウス対策住宅などで使われるようになってきましたが、まだ殆ど普及していません。普及の障害となっているのはその価格の高さで、この価格の問題をクリアできなければ今後の普及はおぼつかないと言えます。例えば、同等の断熱性能のグラスウールで比較した場合、セルロースウールは6〜7倍、炭化コルクやフラックス繊維は10倍以上もするのです。ココヤシ繊維、綿状木質繊維、軽量軟質木質繊維はおよそ3〜3.5倍、ウール断熱材で2.5〜5倍(リサイクルウールで2倍程度)といったところで、自然系断熱材の中でもセルロースファイバーは国内で生産され実績も多いのですが約1.5〜2倍といったところです。しかし、プラスチック系断熱材もグラスウールの3倍程の値段になるので、自然志向や環境負荷の問題を含め時代の流れを考えると、生産エネルギーの小さいこれらの自然系断熱材は、高気密・高断熱の新たな工法を生みだし、流通によるコストダウンを伴って徐々にプラスチック系断熱材に置き換えられてゆくことが予想されます。

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