- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
OMソーラーの基本的なシステムは、まず冬場の日中は軒先から取り入れた新鮮空気を屋根の集熱部で暖め、小屋裏に設置されたハンドリングボックスから床下に送り込まれます。床下に入った暖気は蓄熱体となる土間のコンクリートに熱を蓄えながら床全体を暖め、窓廻りに設けられたスリットから窓面のコールドドラフトを抑えながら室内にゆっくり導入されます。これは自然を巧く利用した熱交換換気とも言えます。夜にはコンクリートに蓄えられた熱が徐々に放熱し、室温の低下を防ぎます。暖房のいらない春から秋にかけては集められた熱はハンドリングボックス内の給湯コイルに水を循環させてお湯を供給することができます。夏場は夜間の放射冷却を利用して涼しい空気を床下に取り込み涼房効果を得ることができます。
このようにOMソーラーは家の中にまで自然を取り入れることを好む日本人の感性にマッチしたシステムで、そのため当初は断熱・気密という観点が希薄でした。失われる熱は太陽で補充すればよいという感覚は高気密高断熱は日本の住宅の良さを失わせる閉鎖的な住宅で、自然の力を大切にしようというOMソーラーの思想とは対峙するものとして捉えられていた感があります。
しかし、OMソーラーもいずれにしろ太陽の熱だけで冬場の暖房を100%賄うことはできず、いつも晴れている訳ではない天候に対して結局は家全体を暖められる容量の暖房設備が必要となる訳です。そうするとやはり太陽で集めた熱をザルのように捨てていては省エネとは呼べない訳で、集めた熱をできるだけ逃がさないようにしなければなりません。
こうしてOMソーラーも高気密高断熱への道を歩むことになるのですが、結果としては、高気密・高断熱住宅の付加価値としてOMソーラーがあるという感じになってきています。そして、太陽エネルギーを積極的に利用しようという視点から始まったOMソーラーが、フォルクス住宅システムA(以下、フォルクスA)によって高気密高断熱を為し得ることで今や非常に魅力的なシステムになっています。
このフォルクスAではプランニングのモジュールを決めることで集成材による柱・梁、及び気密断熱パネルの規格化を図っています。このことで、ただでさえ高価なOMソーラーを高気密高断熱仕様にすることを可能にしている訳ですが、サッシも外部をアルミ被覆した耐候性のある木製断熱サッシを用いるなど、その仕様は非常に充実したものになっています。元々メーカー主導で開発が進められたものではなく、建築家の手で改良を重ねてきものであるため、規格化されたパーツの組み合わせであっても非常にプロ好みの家ができる、というところは何とも心憎いものがあります。