米国特許判例紹介:審査段階におけるcomprisingの解釈3 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:審査段階におけるcomprisingの解釈3

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   米国特許判例紹介:審査段階におけるcomprisingの解釈
      〜新規性判断とcomprisingの関係〜(第3回) 
   河野特許事務所 2009年12月18日 執筆者:弁理士  河野 英仁

            In Re Robert Skvorecz

 審査において原告は1998年1月12日にCIP(一部継続)出願*2を行った。審査官は特許許可の通知を行った。原告は1999年10月14日、図12及び13を補正するために規則1.312(許可後の補正)*3に基づく補正書を提出した。参考図3は出願時の図12及び図13である。


参考図3 出願時の図12及び図13

 原告は、図12及び図13において上部リム(第1リム)12に内向きに突設されたオフセット42の向きが逆であるため、これを外向きとする補正を試みた。審査官は、当該補正は新規事項の追加となるため、これを認めず結局出願時の図12に及び図13のまま、1999年12月7日に948特許が成立した。

 2001年3月15日、原告はクレームを修正すべく、米国特許法第251条*4に基づき、948特許の再発行特許出願09/772,278を行った。再発行特許出願に関する米国特許法第251条の規定は以下のとおりである。

第251 条 瑕疵がある特許の再発行 詐欺的意図のない錯誤があったために,明細書若しくは図面の瑕疵を理由として,又は特許権者が特許においてクレームする権利を有していたものより多く又は少なくクレームしていることを理由として,特許がその全部若しくは一部において効力を生じない若しくは無効とみなされた場合においては,特許商標庁長官は,当該特許が放棄され,法律によって要求される手数料が納付されたときは,原特許に開示されている発明について,かつ,補正された新たな出願に従い,原特許存続期間の残存部分を対象として特許を再発行しなければならない。再発行を求める出願に新規事項を導入することはできない。

 再発行出願のクレーム1*5は以下のとおりである。なお、下線は追加された文言、括弧書きは元のクレーム1から削除された文言である。なお符号は筆者において付した。

1.料理保温器用ワイヤスタンド(10)であり以下を含む、
 第1表面領域を囲み閉じた幾何学的図形を形成するワイヤスチールの第1[上部]リム(12)と、
 [第1表面領域より小さい第2表面領域を囲み閉じた幾何学的図形を形成するワイヤスチールの底部リム(14)と]を備え、
 さらに少なくとも2つの[複数の]ワイヤ脚(16)を有し、該各ワイヤ脚(16)は、[前記底部リム(14)より下にて]水平面に対して90度以上の角度を形成すべく上に伸びる各直立部(19)と共にスタンド(10)用の基部(20)を形成するよう相互に連結される2つの直立部(19)を有し、
 前記ワイヤ脚(16)はその一端に隣接して前記第1[上部]リム(12)に固定され、[前記ワイヤ脚(16)は相対的に等間隔で前記上部リム(12)の取り付け位置よりも下で前記底部リム(14)に固定され、]
 さらに、複数のスタンド(10)を他のスタンドへ顕著に食い込ませることなくぴったり収めることを促進すべく、前記第1[上部]リムに対して各ワイヤ脚(16)を横方向に動かすために、前記ワイヤ脚(16)の前記直立部(19)または前記第1[上部]リム(12)のいずれかにおいて設けられる複数のオフセット(30)を備える。

 審査官は再発行出願のクレーム1は先行技術U.S. Patent No. 5,503,062(以下、Buff特許という)の図2に基づき、予期できる(新規性欠如)としてクレーム1を拒絶した(米国特許法第102条*6)。また図12、図13及び明細書の記載が不明確であるとして米国特許法第121条パラグラフ1*7に基づく拒絶をなした。原告は審判部に審判を請求したが、審判部も審査官がなした新規性欠如及び記載不備の判断を維持した。原告はこれを不服としてCAFCへ提訴した。
                                     (第4回へ続く)

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