中国特許判例紹介:模造ミシン外観設計特許権侵害事件3 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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村田 英幸
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中国特許判例紹介:模造ミシン外観設計特許権侵害事件3

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   中国特許判例紹介:模造ミシン外観設計特許権侵害事件
      〜人民法院の類似判断〜(第3回) 
   河野特許事務所 2009年12月11日 執筆者:弁理士  河野 英仁

             重機株式会社
               原告
                v.
          標準ミシン機械有限公司等
               被告

3.人民法院での争点 
両意匠は類似するか否か
 人民法院は、イ号ミシンと669特許とを対比し、相違点を以下のとおり認定した。
(1)正面図:ミシンヘッド下部付近の押さえ装置の形状が同一でなく、押さえ装置の配置位置も相違する。ミシン横アームヘッド近くにて表れる矩形状の突出部分の外縁輪郭形状が相違する。取っ手の形状が相違する。調節ダイヤルの表面に印刷された数字が相違する。
(2)左側面図:下側縁の形状が相違する。五角形の企業名プレートを嵌め込む凹部の縮尺が相違する、
(3)背面図:後ろ蓋全体の外殻体が相違する。横アーム上の金属軸の存否が相違する。
(4)右側面図:円形ベルトホイールの表面形状が相違する。ベルトホイールを保護するカバーのねじ穴の設置が相違する。
(5)平面図:ねじ穴の個数及び分布位置が相違する。表面半円形突起形状が相違する。オイル穴の設置位置が相違する。
(6)その他:操作面上に設けられたミシン針下方の金属板の形状が相違する。操作面下面の構造が相違する。

 その他、損害額の認定が問題となった。侵害と認定された場合、損害額を立証する必要があるが、どのようにして損害額を算出するのかが問題となる。


4.人民法院の判断
全体的な視覚効果により類比を判断する
 人民法院は、部品の形状、配置位置に相違はあるものの、微細な相違にすぎず、全体的な視覚効果に影響を与えるものではなく、類似すると判断した。

 人民法院は以下のとおり判示した。

「イ号製品の立柱、横アームの矩形状突起部、左側ミシンヘッド、右側ベルトホイール、ベルトホイール保護カバー、ミシン上半円形突起部分等の如く、主要部位の全体形状と、669特許に係る外観設計とは基本的に同一である。部品形状及び配置もまた基本的に同一である。

 確かに正面の押さえ装置、押さえ装置の位置、矩形突出部の上縁形状、左側面下部の外殻形状等の差異が存在するが、これらの差異は一部分における微細な相違にすぎない。全体に対する視覚効果は決して顕著な影響を奏するものではない。」

 次に問題となるのが、損害額である。損害賠償額の算出は専利法第65条*4の規定に基づき判断される。専利法第65条の規定は以下のとおりである。

第65条
 特許権侵害の賠償金額は、特許権者が侵害により受けた実際の損失に基づき判定する。実際の損失の確定が困難なときは、侵害者が侵害により得た利益に基づいて判定できる。特許権者の損害又は侵害者が得た利益の算定が困難なときは、当該特許の実施許諾料の倍数を参照して合理的に判定する。特許権侵害の賠償金額には、特許権者が侵害行為を差し止めるために支払った合理的な支出が含まれるべきである。 特許権者の損害、侵害者が得た利益及び特許の実施許諾料の算定がともに困難な場合は、裁判所は特許権の種類、侵害行為の性質と経緯などの要素に基づいて、1万元以上100万元以下の賠償金額を判定することができる。

 つまり、第1に原告の損失額、第2に被告の利益額、第3に実施許諾料に基づく額、第4に1〜100万元という順序で損害額を認定する。

 原告はイ号ミシンの販売開始時期及び地域を立証したほか、ミシン製造業の平均利潤率が20%以上であることを証明すべく、上海証券交易所Webページの“西安標準ミシン工業株式有限公司”の2007年度報告ページを印刷し、証拠として提出した。その上で、原告は上限一杯の50万元を請求した。これは訴訟提起時における第3次法改正前司法解釈*5においては50万元が最大額であったからである。

 人民法院は、被告がイ号ミシンを製造、販売した時間、販売範囲、価格、一般市場の利潤率等の要素を総合的に判断し、損害額を94,772元(約130万円)とした。なお、この損害額には、イ号ミシン購入費、公証費、調査費等の合理的訴訟費用が含まれる。
                                   (第4回へ続く)

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