1.中小企業の法人税の仕組み
法人税の税率は原則30%なのですが、中小法人については、所得金額が800万円までは税率は18%が適用され、800万円を超える所得については、通常の税率である30%が適用される2段階の構造になっています。
2.中小企業の法人税の減税範囲
さて、 上場企業でも、「自分の会社は“中小企業”だ!」、と思っている方もいますが、税務上の中小企業とは、資本金が1億円以下の会社になります。
日本の会社数は約265万社ともいわれ、その大部分の約255万社は中小企業ですので、減税の及ぶ範囲は大きいといえます。
一方で、70%近い約170万社の会社が赤字法人ですので、減税をしても実際の影響はそれほどでもないとも言われています。税率引き下げに伴う歳入減は2350億円の見込みとされています。
この減税対象をよくみると、中小法人の800万円以下の所得が対象ですので、実際の減税額は800万円の税率差分、つまり56万円 = 800万円×(18%−11%)だけになります。
もちろんこの不景気下で苦しんでいる中小企業にとって56万円の減税は大きいと思います。
しかし、すこし事業規模が大きくなった会社にとっては、通常の税率部分である30%についても引き下げてほしいと思っている会社は多いのではないでしょうか。
3.日本の法人税の国際比較
では、すこし角度を変えて、国際的競争力の観点から法人税率を比較して見てみましょう。
日本の法人税自体は30%ですが、事業税等の地方税もありますので、法人の所得に課される実効税率は、40.69%になります。これは国際的には、アメリカの40.75%とほぼ同じですが、世界的には最高クラスです。
例えば、フランスは33.33%、ドイツは29.83%と約30%前後です。
一方アジアに目を向けると、隣の中国は25%、韓国は24.2%と、日本と約15%の差があります。
この背景として、世界的には企業の競争力を高め、海外企業の誘致や投資を促進するために法人税を引き下げる傾向にあり、ヨーロッパでは2007年ごろに引き下げられ、中国も2008年に30%から25%にまで引き下げられています。
なお、日本の法人税上は、税率が25%以下の国はタックスヘブンとされていますので、中国などは、タックスヘブンに該当することになってしまいます。
もちろん企業の負担する社会保険等も考慮して比較する必要はありますが、やはり、世界的に見て日本の企業の負担は大きいようです。
商売をされている方にとって、利益率を1%上げることがどれだけ大変かは、お分かりになるかと思います。
海外市場で中国企業等と競争している会社にとっては、人件費が安いうえに、税率まで15%もの差があると、なかなか太刀打ちするのは難しいことです。
一方、国内で商売をしている会社にとっても、輸出企業に勢いがなければ、まわりまわって国内消費の低迷につながっていきますね。
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このコラムの執筆専門家
- 森 滋昭
- (東京都 / 公認会計士・税理士)
- 森公認会計士事務所 公認会計士・税理士
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監査・税務・ビジネス、”3つのキャリア”で、約20年。 その間、いつも「決算書の数字の奥にあるものをみる!」感覚を研ぎ澄ましてきました。 だから・・・ベンチャーから上場企業まで、あなたの会社の、一番の社外サポーターに!
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