「アンビリバボー」 強迫性障害について - パニック障害 - 専門家プロファイル

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「アンビリバボー」 強迫性障害について

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「奇跡体験!アンビリバボー」
10月29日(木)19時57分より
フジテレビ、出演:ビートたけし他

強迫性障害について再現ドラマが放送されました。
銀座泰明クリニックが製作協力をいたしました。

出典は以下の書籍(単行本)です。

「僕は人生を巻き戻す」文芸春秋

「強迫性障害」という病気をご存知ですか? 自分の意志に反して不安感が頭を支配してしまい、強迫観念を打ち消すために不合理な行動(儀式)をせずにはいられない。潔癖症などもそのひとつです。本書は、「時間を進めてしまうと愛する人が死ぬ」との強迫観念に囚われて地下室から出られなくなってしまった米国人青年と、彼を救うために全力を尽くす型破りな精神科医の物語。患者と医師が信頼関係を育み病気を克服してゆく過程が、読む者の心を揺さぶります。(KN)

文芸春秋


放送後記

強迫とは、自分では無意味や不合理と分かっている観念や衝動にとらわれることです。ある考え、語句、文章などが意識に押し入ってきて、それをどうしても振り払うことがきない思考を強迫観念といいます。そしてその考えを振り払うために、ある行動に駆り立てられ、それを行わないと気が済まない行動を強迫行為といいます。強迫行為では手や衣服などを繰り返し洗う洗浄強迫や鍵やガスの元栓を繰り返し確かめる確認強迫などが代表的です。

(濱田秀伯、精神症候学、弘文堂より)

ある程度の強迫は標を達成するために必要な要素で、社会的に成功した人物にもしばしば見受けられます。番組ではベッカムが冷蔵庫の中の物の位置にこだわっていることが示されていましたし、イチローが毎日、決まったスケジュール・メニューで生活・練習していることは有名な話です。研究者も学問を極めるには、几帳面・完璧主義などの強迫性が求められます。

しかし、度が過ぎると、無意味で不合理な観念・行為に終始します。仕事や生活に支障を来たし、病気として治療の対象になります。ドラマのエド・ザインさんは母親の死を目撃し、誰にも言うことなく、胸に秘めていました。そして「時間を巻き戻す」という強迫行為を行わないと、「家族や友人が死んでしまう」という観念を生じました。これは加害恐怖(他人に危害を与えてしまうのではないかという恐怖感)や強迫欲動(ある行動をしてしまうのではないかという欲動が繰り返し起きる、反社会的、破壊的な内容が多い)とも言えるでしょう。この結果、数年以上も地下室に閉じこもった生活を送ることになりました。実際の映像では精神病と見間違うほどの風貌・行動を呈していました。

強迫性障害から統合失調症に移行される方は数%いますし、統合失調症で強迫症状を呈する方も数多くいます。特に思春期の強迫症や恐怖症は妄想化(いわゆる思春期妄想症)することが少なくなく、精神病の前駆症状として注意深く経過観察していく必要があります。両者には自我障害が共通して認められ、具体的には離人症(自分の意志で行っているという実感が薄い)、二重自我(自分の中にもう一人の自分がいる感じ)、自我境界の希薄化(内と外、自と他の区別がつかなくなる)などが生じます。最近はこれらの状態を ARMS At Risk Mental State と呼び、早期介入の糸口としています。


1.微弱な陽性症状 (APS: Attenuated Psychotic Symptoms)
2.短期間の間歇的な精神病症状
   (BLIPS: Brief limited intermittent psychotic symptoms)
3.精神病になりやすい特性(家族歴や人格特徴)および
    社会的機能低下
(1年以内に30%以上のGAF*スコアの低下)
   (* Global Assessment of Functioning の略)

(水野雅文、精神疾患の早期発見・早期治療、精神神経学雑誌、ほか)


強迫性障害の治療は、SSRI Serotonin Selective Reuptake Inhibitor の服薬と、CBT Cognitive Behavioral Therapy (認知行動療法)が有効とされています。エドさんも番組で紹介されませんでしたが、SSRI を服用していたといいます。そして、ハーバード大学のマイケル・ジェイナク博士によるCBT が施行されました。しかし、2年におよぶ献身的な治療にもかかわらず病気は回復せず、治療は中止することになりました。

その後・・・エドさんはマイケル博士の教えを自ら実践し、1年後に見事回復しました。その背景にはマイケル博士の流した涙やエドさんを取り巻く家族の支えがあったそうです。これは驚くべきエピソードでありますが、最近の精神医学において注目されているトピックスでもあります。すなわち「レジリアンス」という概念が相当します。これは元々、物理学で「弾力性」や「反発力」という意味で用いられていましたが、最近の精神医学では病気への「抵抗力」や健康への「回復力」という意味で用いられています。このレジリアンスが働き、治療は奏功し、回復へ至るわけです。それでは、レジリアンスとは具体的にどのような内容でしょう。海外の研究によると以下の因子が挙げられます。


1.前向きな姿勢
    楽観主義とユーモアのセンス―認知行動療法で学習可能
2.積極的な対処様式
    解決策を模索、感情を制御―能動的に学習をする
3.柔軟性のある認知、認知面の再評価
    逆境に意義や価値を見い出す―失敗を成長の糧にする
4.倫理基準
    核となる信念―人生の指針、宗教・信仰
5.運動
    定期的な運動―忍耐力や自尊心を高める
6.社会的支援
    手本となる人物、信頼できる相手―社会的ネットワーク

(田亮介、PTSDにおけるレジリアンス研究
 加藤敏、八木剛平、レジリアンス
  現代精神医学の新しいパラダイム、金原出版)

いずれもエドさんに認められた因子です。エドさんは4人兄弟の末子として両親の深い愛情を受けて育ち、高校ではアメフト部に所属していました。家族の仲は良く、エドさんの病気に理解と協力をしてくれました。そして、マイケル博士の献身的な治療を受けられました。治療は直ぐに効果を示しませんでしたが、時を経て、彼の病気は好転しました。

その転機となったのはマイケル博士の流した涙に彼が触発され、自ら治そうした能動的な姿勢です。他力本願ではなく、自分の意志に基づき、症状や病気をコントロールしようという姿勢が回復を促しました。このような自分をコントロールする力が自分の内部にあると感じる感覚を Locus of control といいます。これが内在型 internal であるほど、自分の行動や生活を主体的に行えると考えられています。エドさんは本人の資質と周囲の援助により、Internal locus of control を高め、強迫症状を軽減し、病気から回復したのです。

以上、エドさんの再現ドラマから強迫性障害およびレジリエンスについてご説明いたしました。強迫性障害に限らず、レジリエンス、病気への抵抗力・健康への回復力をいかに高めるかが、あらゆる疾患の治療において最も重要です。この文章を読んで下さった皆様のレジリエンスが高まることを祈念して本稿を終えさせていただきます。

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