両手取引原則禁止の是非 - 不動産売買全般 - 専門家プロファイル

中石 輝
株式会社リード 代表取締役
神奈川県
不動産業
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両手取引原則禁止の是非

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不動産業界の常識は世間の非常識

8月30日に行われた衆議院選挙では民主党が歴史的な大勝を収め、半世紀ぶりに政権が交代することとなりました。
日本の各制度の中では、明らかに制度疲労を起こしている分野も多く、民主党に対する我々国民の期待感(もしくは自民党に対する失望感)が今回の選挙の結果を導き出したことは明白です。

また、不動産流通の制度、とりわけ仲介手数料に関する制度疲労の内容を、私自身これまでのコラムでも触れてきました。
(過去のコラムはこちらより)↓
時代遅れになった仲介手数料 vol.1
時代遅れになった仲介手数料 vol.2

政権交代を果たした民主党の政策においても、マニフェストにまでは反映されませんでしたが、不動産流通制度の政策の中で下記のような一文が盛り込まれ、仲介業界内では大きな物議となりました。
「一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止とします。」
業界内でも賛否両論あるかとは思いますが、なぜ民主党がこのような政策を挙げることとなったのか、その背景について少し触れてみます。


そもそも「両手取引」自体に問題があるのか?


中古物件の取引の際には、その多くで仲介業者が介在します。
個人の売主様がご自宅を販売しようとした際にA社に売却の仲介を依頼したとします。その物件の客付けも同じA社が行う取引のことを「両手取引」、買主側には別のB社が仲介に入る取引を''「片手取引」''と呼びます。
上記の例の場合、両手取引ではA社が売主・買主の双方から手数料を取り、片手取引ではA社は売主から、B社は買主からそれぞれ手数料を取ります。
両手取引という行為自体に何ら悪質性があるわけでもなく、物件の特性によっては両手取引でないとなかなか売り切れない不動産があるのも事実です。


なぜ、「両手取引原則禁止」という発想になるのか


両手取引であろうと、片手取引であろうと、仲介業者側の契約に至った際に掛かる労力やコストはそれほど変わりません。
そうすると、売主様から不動産売却の依頼を受けた仲介業者にとって両手取引のほうが売上げが2倍になる訳ですから、当然効率の良い仕事になります。
両手取引を優先させたいがために、物件の情報を正規の流通ルートに載せない「情報の囲い込み」という行為を行う仲介業者が業界の中では残念ながら少なくありません。
仲介業者が「情報の囲い込み」を行っている事実を物件の所有者である売主様に説明しているケースが殆どないといった「流通経路の不透明性」、またこの行為を行うことによる''「売主様の機会損失のリスク」''が問題視され、「両手取引原則禁止」という政策につながっているものと思われます。


実際に「両手取引原則禁止」となるのか


仲介業者側の利益重視のための「情報の囲い込み」という行為に問題があるのであって、両手取引自体に問題があるわけではありません。
政策の中に「原則」という文言を入れて、暗に「例外的に認めるケースもある」としている点に、政策作成者側も問題点を理解していることがうかがえます。

また、不動産の売却を依頼された売主様にとっても、ご自身の希望する価格や期間内に売却が成立すれば、両手・片手取引のどちらであろうが構わないというのが現実でしょうし、情報の公開の仕方もある程度仲介業者側に任せてもいいと考える方が多いでしょう。

そこで、今後は「流通経路の透明性を高める」という観点から「仲介業者側の説明責任」がさらに求められるようになり、仲介業者が売主様から''「両手取引となった場合はそれを了承する」''、''「物件情報の流通経路はこのような形を取る」''といったような内容を記した合意書のような書面のやり取りを行っていくようになると私は考えております。

政策を実務ベースに落とし込んでいくには難しい部分も多々あると思いますが、安心して中古物件を取引できる市場整備に向けて、変化のスピードがギアチェンジされた事は、まぎれない事実でしょう。


リード  中石 輝
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