米国特許判例紹介:記載不備と特許の権利範囲解釈-8- - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:記載不備と特許の権利範囲解釈-8-

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   米国特許判例紹介:記載不備と特許の権利範囲解釈
      〜400万ドルのメガネ特許権侵害〜(第8回) 
   河野特許事務所 2009年10月9日 執筆者:弁理士  河野 英仁

            Revolution Eyewear, Inc.,
          Plaintiff/Counterclaim Defendant-Appellant,
                v.
          Aspex Eyewear, Inc. and Thiery Ifergan, et al.,
          Defendants/Counterclaimants-Appellees


 4.CAFCの判断
 先行技術欄に複数の問題を設定しても、クレームは全ての問題に言及する必要はない。
 CAFCは、明細書において2つの異なる問題を先行技術欄において設定した場合でも、特許の各クレームが、双方の問題に言及する必要は必ずしもないと判示した。

 これに類似する事件としてCAFCは、Resonate事件*7及びHoneywell事件*8を挙げた。Resonate事件及びHoneywell事件でも同様に、先行技術欄に複数の問題が記載されており、クレームは全ての問題について言及していなかった。Resonate事件及びHoneywell事件ではクレーム範囲の解釈において、当該クレームが先行技術欄の全ての問題に言及していなくても、クレーム範囲解釈に影響を与えない旨判示された。

 被告は、本事件は記載要件が争点であり、クレーム範囲解釈を問題とするResonate事件及びHoneywell事件とは異なると反論したが、CAFCはこれを却下した。CAFCは記載要件とクレーム範囲解釈とは異なる概念であることは認めつつも、これらは相互に関連する機能を果たすと述べた。すなわち、裁判所は、クレーム範囲解釈においてクレームの範囲を解明するためにガイダンスとして明細書を読む。同様に、裁判所は、記載要件の判断においてクレームに対し適切なサポートがなされているか否かを決定するために明細書を読む。

 このようにCAFCは記載要件とクレーム範囲解釈との関連性が強いことから、Resonate事件及びHoneywell事件における判示事項を適用し、一方の問題「強度劣化」にのみ言及しているクレーム22は記載要件を満たし、無効理由を有さないと判断した。

                                (第9回へ続く)

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