ベンチャー企業社長のための知的財産基礎講座(第6回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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ベンチャー企業社長のための知的財産基礎講座(第6回)

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          ベンチャー企業社長のための知的財産基礎講座(第6回)
     河野特許事務所 2009年8月14日 執筆者:弁理士  河野 英仁

5.外国での権利化は?
 企業の成長に伴い、外国での事業展開をも視野に入れなければなりません。当然外国でも特許を出願し権利化を図る必要があります。日本の特許と外国の特許とは無関係であり、国毎に権利化を図る必要があります。外国出願には2つのルートがあります。一つはパリ条約ルート、もう一つはPCTルートと呼ばれています。

 パリ条約ルートは、日本の特許出願日から1年以内に、日本国特許出願を基礎としてパリ条約同盟国に直接特許出願を行うルートです。例えば、米国及び中国に出願する場合は、第2図に示しますように、日本出願の日から1年以内に、日本出願を基礎として米国及び中国へ特許出願を行います。この場合、米国及び中国の出願日は、日本の出願日まで遡るという利益を享受することができます。



第2図 パリ条約ルートによる出願


 一方、PCTルートはパリ条約の特別規定として認められているものであり、出願を希望する国を指定し、指定国に対する国内出願の束としての効力を有する国際特許出願を行うルートをいいます。例えば、日本出願の日から1年以内に、日本出願を基礎とした国際特許出願を行います。国際特許出願を行う場合、権利化を希望する国を指定します。全てのPCT加盟国を指定することも可能です。そして日本出願の日から2年6月以内に権利化を希望する国に国内移行手続きを行います。この際、各国が要求する翻訳文等の提出が必要となります。なお、最初に日本出願を先に行ってから1年以内に国際特許出願を行う例を示しましたが、最初から国際特許出願を行うことも可能です。この場合、最初の国際特許出願の日から2年6月以内に国内移行の手続きが必要となります。



第3図 PCTルートによる出願


 パリ条約ルート、PCTルートどちらを利用するのがベターかという問題が生じます。権利化を希望する国が既に決定しており、また国数が少ない場合はパリ条約ルートをお勧めします。国際特許出願手数料が不要となりコスト面で有利だからです。

 一方、権利化を希望する国が明確でない場合、外国での事業化はまだ先であるが将来のために権利化しておきたい場合は、PCTルートをお勧めします。国際特許出願の段階で全ての加盟国を指定することができ、また翻訳文提出期間として2年6ヶ月もの猶予期間が与えられているからです。また国際特許出願を行った場合、サーチレポートが提示され、よく似た技術が他に存在するかを事前に知ることができます。

 外国特許出願は費用が高額となるため弁理士とよく相談した上で最適なルートを選択するのが良いでしょう。

6.まとめ 商標・特許をビジネスにどう生かすか?〜知的武装の時代
 事業に有用なアイデアであれば積極的に特許出願をすることが好ましいでしょう。他社が同じアイデアについて先に権利を押さえてしまう可能性があります。こうなるとビジネスが立ちゆかなくなるリスクが生じます。商標についても同じく他社商標権に十分注意すると共に、自社の商品名・ロゴについて商標登録出願を行い、積極的に権利化を図ります。
 以上述べましたように、自社技術を守るアイデアを特許権にて、また、自社ブランド価値を高める商標権にて知的武装を行うことが企業戦略上求められます。知的財産権を確実に権利化していくことで企業の重要な財産権が蓄積されていきます。


◆特許及び商標に関し、ご不明な点がございましたら河野特許事務所の弁理士にお気軽にお問い合わせ下さい。

(終わり)

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