廃棄物処理政策に関して検討されている論点(4)-3 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2016年12月07日更新

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廃棄物処理政策に関して検討されている論点(4)-3

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正

立入検査が可能な場所が拡大


 (第1回目)廃棄物処理政策に関して検討されている論点(4)
 (第2回目)監視活動は目的達成のための手段の一つにすぎない
 の続きです。


 中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「不法投棄対策の強化・徹底」に関して、以下の5点に関して具体的な検討が行われています。
・監視を強化するべき
 自治体による監視のみならず、衛星や自治体・警察OBを活用した、より効率的で密度の高い監視網を形成していくべきではないか
・罰則をもっと強化するべき
・立入検査の可能な場所を拡大するべき
・運搬車両・船舶、不適正処理が行われた土地の所有者の土地・建物
・措置命令を拡充するべき
 収集運搬や保管基準の違反も、措置命令の対象にするべき


 今回のコラムでは、「立入検査の可能な場所を拡大するべき」について解説いたします。


 専門委員会では、
 「行政が立入検査できる場所に制限があるため、不法投棄などを未然に防止することが困難となっている」
 「現行法の立入検査できる範囲を広げ、不法投棄の監視を機動的に行えるようにするべき」
 との意見が出されました。

 現行法で行政が立入検査できる対象としては、
1.排出事業者の事務所・事業場
2.廃棄物・廃棄物である疑いのある物の収集・運搬・処分を業とする者の事務所・
  事業場(無許可業者による不法投棄現場、無許可設置施設を含む。)
3.廃棄物処理施設のある土地・建物
4.廃棄物が地下にある土地(旧最終処分場など)

 となっています。 

 上記の対象者が、立入検査を正当な理由なく、拒否や妨害した場合は、「30万円以下の罰金」という刑事罰の適用対象となります。

 一般的には、排出事業者や処理業者のところを定期的に立入検査して、問題が起こっていないかどうかを監視するのが、もっとも大きな目的です。
 通常は後ろめたいことが無いため、余程のことがない限り、当事者が立入検査を拒否することはありません。

 しかし、不法投棄が行われつつある現場においては、現場にいる当事者が立入検査を拒否するのは日常茶飯事です。

 今、そこで不法投棄が進行している現場を、行政に見せるわけにはいかないからです。

 そのような言い逃れをさせないよう、立入検査に対する罰則が定められているわけですが、法律の構造上、上述した立入検査できる対象以外の当事者には、行政からの立入検査を受忍する義務がないということになります。

 専門委員会では、現在の検査対象に加えて
・廃棄物の不適正処理がされた土地の所有者の事務所
・収集運搬車両

 を追加するべく検討がなされているようです。


 法律に規定することによって、立入検査の対象を明確化するのは大変結構なことなのですが、個人的には、上記の2項目の追加は必要ない気がします。

 まず、「土地所有者の事務所」ですが、不法投棄の現場を超えて、不法投棄実行者ではない土地所有者の事務所まで立入検査を行う必要性はほとんどありません。
 土地所有者の事務所を検査したところで、大した証拠が出てくるとは思えないのです。

 それに、これでは「立入検査」ではなく、「令状に基づいた捜索」に近い検査です。
 どうしても土地所有者の事務所の検査が必要なのであれば、行政がしゃしゃり出るのではなく、刑事訴訟法に基づき、捜査機関によって捜索をする方が適切です。

 また、「収集運搬車両」についてですが、わざわざ廃棄物処理法で立入検査の対象として規定しなくとも、既に今でも路上検問などで車を止め、携帯書類の検査を実行できています。

 「運搬車両は、廃棄物処理法の立入検査対象ではないので、立入検査を拒否する」と、どこかで言われたことがあるのでしょうか?(笑)


 立入検査は法律の規定に基づく適切な公権力の行使ですが、検査自体は、相手方の同意があれば、いつでも行えるものです。

 「法律で細かく検査の対象が規定されていないから、不法投棄を抑制できない」というのは、単なる言い訳にすぎません。

 このコラムでも常々申し上げているところですが、人間対人間の生身の交渉場面において、「いかに行政の指導に従わせるか」が、法律には書けない真のポイントになります。

 法制度の不備をあげつらうのではなく、今できることを必死にやりとげることこそが最優先されるべきなのではないでしょうか。
  

 運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
 著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」