住宅断熱基礎講座/03-5:通気工法とは? - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

野平 史彦
株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
千葉県
建築家

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対象:住宅設計・構造

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住宅断熱基礎講座/03-5:通気工法とは?

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住宅断熱基礎講座 03.高気密・高断熱住宅の誕生
03-5:通気工法とは?

 「防湿気密シート」とは、単純に「気密シート」あるいは「防湿シート」と言う場合が多いのですが、普通は気密と防湿の両方を兼ね合わせたものです。

 2センチ角の穴があると、そこから侵入した水蒸気は一シーズンで30リットルもの水になり壁内結露の原因になるのですから、この防湿気密シートをきちんと施工することが大変重要であることが分かります。

 しかし、それも完全に施行することは困難であり、如何に乾燥材を使用しているとしても、木材には多量の水分が含まれており、いずれにしろ壁体内の湿気を逃がしてやる工夫が必要になります。

 外壁材との間に設けられる「通気層」は隙間から漏れ入る水蒸気と、木材の中に含まれる水分を屋外に排出するための安全装置の役目を果してるのです。

 また、夏場陽の当たった外壁面で暖められた通気層内の空気は上昇気流を起こし、屋根の一番高いところから、即ち、棟から外に排出されます。それに伴って下(土台天端の水切りと外壁材の隙間)から外気が引き込まれます。
 それによってジリジリと暑い夏の日差しから受ける熱を逃がすと同時に構造体である柱・梁の乾燥を助けます。冬は逆に通気層内の空気が動かないので空気層自体の断熱効果を期待できる訳です。

 外壁材と軸組の間にこの通気層を設ける「通気工法」は、中気密・中断熱の一般の住宅でも行われるようになりましたが、防湿層を設けてはいないので、これでは壁体内に「結露が起こる」ということは仕方がないと受け入れて、せめて結露した壁の乾燥を助けようという意図のように見えます。そもそも昔は通気性のある土壁などが外壁材であったのが、新建材による通気性のない外壁材が使われるようになったための苦肉の策だったのかもしれません。

 そして「防風シート」ですが、これは、グラスウールやロックウールといった繊維系の断熱材は繊維の中の空気が静止していることでその断熱性能を発揮するので、通気層内の気流に晒されない様にするために必要となるものです。
 また、断熱材の内に侵入した水蒸気を通気層側に排出し、万が一、外部から通気層を通って雨水が侵入しても、断熱材を雨水から守ることができます。

 木造在来軸組工法は、床下と外壁、小屋裏(屋根と天井の間の空間)が空間的に連続しているため、壁体内の気流による断熱性能の低下を防ぐための「通気止め」を壁の上下の取り合い部分に設けることも重要なポイントになります。また、通気止めの施工は間仕切壁でも同様で、間仕切壁を通って流れ込んだ室内の暖かく湿った空気が、小屋裏で結露することを防ぎます。