- 澤田経営研究所 澤田和明
- 澤田経営研究所 代表
- 群馬県
- 経営コンサルタント
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
XBRLは、「X=拡張可能」「B=ビジネス」というアルファベットの文字に、将来の方向性が託されています。つまり、企業財務情報を拡張して再利用したり、それ以外のビジネス領域において利用される可能性を秘めているのです。
例えば、金融機関では融資判断を行う場合、決算書がXBRLデータであれば、入力ミスの回避や入力に係る人的コストの大幅な削減が可能となり、それにより融資のスピードUPが図れます。
また、中小企業の財務情報は信頼感にバラつきがあり、財務情報のみを与信判断の材料にすると不測の貸倒れが発生するおそれがあります。そこで、財務情報に加え、顧客企業の経営状態を的確に表す非財務指標の開示を求め、これらの財務・非財務情報を包括的に利用して与信判断の精度を高める取り組みが考えられます。与信判断に利用する非財務指標は、顧客企業の成長と信頼性の向上を定量的に計測するもので、例えばBSC(バランスト・スコアカード)、CSR(企業の社会的責任)、内部統制強化等の視点を元に指標を作ることができるでしょう。これらの非財務指標は、顧客企業にとって会社全体の経営状態を示す重要な指標であり、それを改善することは取りも直さず自らの成長への取り組みとなります。実際の指標のやり取りは、金融機関が非財務指標を盛り込んだタクソノミを
いわば、「経営課題タクソノミ」として顧客企業に提示し、顧客企業はタクソノミに従ってインスタンスを作成・報告するという仕組みによって実現できます。XBRLは、金融機関と顧客企業がタクソノミを通じて、指標の意味や意図等を互いに共有・理解した正しい開示を可能とします。これはある意味で中小企業向け「コベナンツ付き融資」と言えます。これにより、金融機関と顧客企業は、指標改善に向けた議論を通じてより強固な信頼関係を築くことができます。
このような様々な可能性を秘めたXBRLですが、あまり知られていません。これは大きな損失です。本書は、一般のビジネスマンが手軽に読め、理解しやすい内容を目指しました。本書が、XBRLの普及の一助なれば幸いです。