中国における模造品と特許権に基づく権利行使(第8回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国における模造品と特許権に基づく権利行使(第8回)

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中国における模造品と特許権に基づく権利行使 
〜改正専利法を踏まえた中国模造品対策シミュレーション〜(第8回) 
河野特許事務所 2009年7月27日 執筆者:弁理士 河野英仁


(4)損害賠償請求権
 損害賠償額の算定については専利法第60 条に規定されている。専利法第60 条は以下のとおり規定している。
 「特許権侵害の賠償金額は,権利者が侵害行為によって受けた損害または侵害者が権利侵害行為により取得した利益に基づいて確定する。侵害された権利者の損害または権利侵害者が取得した利益を確定することが困難な場合は,当該特許の実施許諾用の倍数を参酌して合理的に定める。
 すなわち,日本国特許法第102 条第1 項乃至第3 項に類する規定ぶりとなっている。より具体的な算定方法については,司法解釈第20 条及び第21 条(12)に規定されている。
 権利者が侵害によって受けた損害額とは,「特許権者の特許製品が権利侵害によりもたらされた販売量の減少総数に特許製品1 個あたりの合理的利潤所得を乗じた値」とされる。また,減少総数の確定が困難な場合は,被告侵害製品が市場で販売された総数に特許製品1 個あたりの合理的利潤所得を乗じた積を特許権者の損害額とすることができる(司法解釈第20 条第2 項)。
 侵害者の利益とは,「侵害者が侵害製品を市場で販売した総数に,侵害製品1 個あたりの製品の合理的利潤所得を乗じた積」である。この利益は一般には侵害者の営業利益に基づくが,悪質な場合等,完全に侵害することを目的とする侵害者に対しては販売利益として計算することもできる(同法第3 項)。
 日本国特許法第102 条第3 項と異なり,専利法第60 条には「実施料相当額の倍数」と規定されている。この倍数に関し,司法解釈第21 条は以下のとおり規定している。
 「権利を侵害された者の損害または権利侵害者が得た利益の確定が困難である場合,参酌できる特許実施許諾料がある場合,人民法院は特許権の種別,権利侵害者の権利侵害行為の性質と情状,特許実施許諾料の金額,当該特許許諾の性質,範囲,時間等の要素に基づき,当該特許実施料許諾料の1 乃至3 倍を参酌して賠償金額を合理的に確定することができる。
 この点,米国特許法第284 条に類する解釈が提示されている点は興味深い。米国特許法第284 条は,
 「…裁判所は損害賠償額を評決又は査定された額の3 倍まで増額することができる。…」と規定している。中国の司法解釈によれば倍数はあくまで実施料相当額に基づくものであることから,米国の如く巨額の賠償額が認められる可能性は低いが,若干懲罰的な規定ぶりとなっている。
 また,参酌すべき特許実施許諾料が存在しない場合,または,実施許諾料が明らかに不合理である場合,人民法院は特許権の類別,権利侵害者の侵害行為の性質及び状況等の要素に基づき,一般に500 元以上30 万元以下で損害賠償額を確定することができる(ただし最大で50 万元を超えることはできない。)(司法解釈第21 条)。さらに,司法解釈22 条では侵害に対する調査費を含む費用を損害賠償額に含めることができる旨規定している。
 「人民法院は権利者の請求及び具体的事情に基づき,権利者が調査,侵害行為を制止するために支払った合理的費用を賠償額の範囲に算入することができる。
(5)改正専利法第65 条
 改正専利法においては,従来司法解釈第21 条及び第22 条において規定していた内容を明文化した。改正専利法第65 条は以下のとおり規定している。「…賠償額には,特許権者が侵害行為を制止するために支払った合理的な支出が含まれるべきである。
 特許権者の損害,侵害者が得た利益及び実施許諾料の算定が共に困難な場合は,人民法院は特許権の種類,侵害行為の性質及び経緯等の要素に基づいて1 万元以上100 万元以下の損害金額を確定することができる。
 このように,改正後は損害額の認定が困難な場合,人民法院が確定する損害額の上限は100 万元(約1,400万円)と大幅に引き上げられ,特許権保護の強化が図られている。
(6)時効経過後の実施について
 特許権者が被告の侵害行為を知りまたは知るべきであった日から2 年を経過した場合,時効が成立する。時効である2 年経過後も,引き続き模造品を製造・販売している場合,手立てはないのであろうか。司法解釈第23 条(13)には,時効経過後であっても,特許権の存続期間内であれば,模造品の製造・販売の差し止め,及び,提訴から2 年を限度とした損害賠償請求が認められている。同条は以下のとおり規定している。
 「…権利者が2 年を経過した後に,提訴した場合において,権利侵害行為が提訴時も継続しており,特許権の有効期限内であれば,人民法院は被告の侵害行為を停止する判決をなさねばならず,権利侵害による損害賠償は,権利者が人民法院へ提訴した日から2 年遡って計算しなければならない。

(第9回に続く)

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