中国における模造品と特許権に基づく権利行使(第6回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国における模造品と特許権に基づく権利行使(第6回)

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中国における模造品と特許権に基づく権利行使 
〜改正専利法を踏まえた中国模造品対策シミュレーション〜(第6回) 
河野特許事務所 2009年7月22日 執筆者:弁理士 河野英仁


(4)模造品の公証付き購入
 裁判所には購入した模造品を証拠として提出する。この際,公証人立ち会いの上で模造品を購入しておくことが重要となる。公証を得ることなく自社にて模造品を購入し,証拠として提出した場合,その購入した模造品の真偽を巡り争いとなる虞がある。提訴したものの被告側から,「当該模造品は被告が製造したものではない」と反論された場合,その時点で敗訴となるからである。公証付きで模造品を購入した場合,あわせて伝票等も証拠として保存しておく。
(5)訴訟提起前の証拠保全
 模造品が非常に高額である場合または大型機械の場合等,模造品の購入が困難な場合がある。
 このような場合,訴訟提起前に,証拠保全を行うことができる。現行の専利法では訴訟提起前の証拠保全に関しては何ら規定が存在せず,中国民事訴訟法第74 条(4)の規定に基づき証拠保全を行うことができる。
 改正専利法においては,訴訟前における証拠保全に関する規定が新設された。改正専利法第67 条第1 項は次のとおり規定している。
 「特許権侵害行為を制止するために,証拠が滅失し,または,後に取得が困難となる状況下では,特許権者又は利害関係者は提訴前に人民法院に証拠の保全を申請することができる。
 ただし,申請に際しては担保の提出が要求されている(同条第2 項)。また,人民法院が保全措置をとった日から15 日以内に訴訟を提起することが必要とされている(同条第4 項)点に注意すべきである。
(6)警告または提訴
 事前に警告を行ってから訴訟を提起する日本の実務と異なり,一般的に中国では警告することなく訴訟を提起する。警告による場合,証拠の隠滅の虞があり,また,逆に相手方から相手方にとって有利な地域における人民法院にて特許権侵害不存在確認訴訟(5)を提起される虞があるからである。
 特許権侵害行為により提起した訴訟は,権利侵害行為地または被告住所地の人民法院が管轄する(司法解釈第5 条(6))。従って,模造品の製造または販売者の地元の人民法院に,特許権侵害不存在確認訴訟を先に提起される可能性が生じる。日本企業にとっては相手方の地元の人民法院で不利な戦いを強いられる虞がある。反訴として日本企業がその後に,権利侵害行為地の人民法院にて訴訟を提起したとしても,先に訴訟案件を受理した人民法院が審理を行うことになる(7)。
 さらに,特許権侵害訴訟の時効は2 年(8)と短いため警告及び交渉に長期間費やすのも得策ではない。もっとも,交渉をスムーズに進めることができる企業であれば,警告も一つの手であるが,原則として警告をすることなく直ちに訴訟を提起することが好ましい。
(7) 人民法院への提訴か,特許業務管理部門への処理請求か
 専利法第57 条には,「特許権者または利害関係人は人民法院に提訴することができ,また特許業務管理部門へ処理を請求することができる。」と規定されている。つまり中国では司法ルートによる解決の他に,行政ルートによる解決をも図ることができる(9)。特許業務管理部門による場合,迅速な解決及び費用の低減を図ることが可能となる。しかしながら,現在では,特許業務管理部門の利用は減少傾向にあり,逆に人民法院への提訴が増加傾向にある。
 これは,知的財産権保護の高まりを受けて司法システムが拡充されてきたことに起因するものである。また,特許業務管理部門に対しては,侵害行為の停止しか請求することができない点も問題である。特許業務管理部門は,当事者の請求に応じて,損害賠償金額についての調停を行うことができるに過ぎない(専利法第57 条)。
 さらに,特許業務管理部門の決定に不服がある当事者は,人民法院に提訴することができ,人民法院は再度審理を行う。司法解釈第25 条(10)は以下のとおり規定している。
 「人民法院が受理した特許権侵害紛争事件について,既に特許業務管理部門が侵害または非侵害の認定を下している場合も,人民法院は当事者の訴訟請求について全面的な審理を行わなければならない。
 すなわち,特許業務管理部門が侵害または非侵害と認定しようが,人民法院は再度全面的な審理を行うため,却って解決までの期間が長引く場合もある。以上のことから,特段の事情がない限り人民法院に対し訴訟を提起することが良いと考えられる。

(第7回に続く)

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