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〜改正専利法を踏まえた中国模造品対策シミュレーション〜(第3回)
河野特許事務所 2009年7月15日 執筆者:弁理士 河野英仁
2.戦略的権利取得
(1)特許の種類
中華人民共和国専利法(以下,専利法)において保護対象となる発明創造とは,「発明」,日本の実用新案に対応する「実用新型」,及び,日本の意匠に対応する「外観設計」をいう(専利法第2条)。すなわち米国の如く,発明,実用新型及び外観設計の3 つをまとめて特許として保護している。
(2)模造品に有効な権利
このうち,模造品対策について効果的なのは実用新型と外観設計である。実用新型及び外観設計は無審査で登録されるため(専利法第35 条),模造品に対しても早期に権利行使を行うことができるからである。特に外観設計は無審査でありながら現行法では,日本の実用新案技術評価書に相当する書面を提出する必要もなく,また,権利も無効となりにくい。これは,公然実施については国内主義を採用しているため(専利法23 条),先行技術の範囲が狭いことが理由の一つとしてあげられる。また類比判断には,6 面図を用いた対比が行われるが,背面及び底面を含む各方向から撮影した写真等を証拠として提出することが困難であることも理由の一つとしてあげられる。従って,中国にて製造または販売される完成品,及び,取引対象となる部品については外観設計に基づく権利化を積極的に図
るべきである。
発明特許による権利行使も有効であるが,権利取得までに実体審査を経る必要があり,模造品に対してすぐに権利行使というわけにはいかない。もちろん,将来の高度な発明特許権侵害訴訟に備えて,着実に権利化しておくことは重要である。
(3)不正競争防止法
模造品に対して不正競争防止法に基づく権利行使は有効であろうか。中国不正競争防止法第5 条第2 号は以下のとおり規定している。
「第5 条 事業者は次の各号に掲げる不正な手段を用いて市場取引に従事し,競争相手に損害を与えてはならない。…
(二)無断で周知商品の特有の名称,包装,装飾を使用し,または周知商品に類似する名称,包装,装飾を使用して,他人の周知商標と混同させ,購買者に周知商品と誤認させること。」
同号によれば,周知商品であることが要件とされている。また,同号は「包装,装飾を使用し」と規定しる。また,同号は「包装,装飾を使用し」と規定しており,模造品が「包装」,「装飾」といえるか否かも問題となる。
このように,不正競争防止法によっては周知であることがネックとなることから,あくまで最終手段と考えておいた方が良いと思われる。
以下,本稿では外観設計について特許権が発生し,この外観設計をそっくりまねた模造品を中国現地スタッフが発見したことを想定して説明を行う。
(第4回に続く)
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