廃棄物処理政策に関して検討されている論点(2)-7 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2024年04月18日更新

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廃棄物処理政策に関して検討されている論点(2)-7

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正

廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進(第7回目)


 (第1回目)廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進
 (第2回目)「経理的基礎」ってなに?
 (第3回目)行政監視の動向とその影響について
 (第4回目)欠格要件とは
 (第5回目)実現するか?収集運搬業許可手続の簡素化
 (第6回目)優良性評価制度とは
 の続きになります。
 

 中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進」に関して検討されているポイントは以下の4点です。
・「経理的基礎」などの許可基準を明確にするべき
・行政は不適正処理への取締りをもっと徹底するべき
・欠格要件の見直しや、産業廃棄物収集運搬業許可手続の簡素化等、一定の合理化をするべき
・信頼できる産業廃棄物処理業者を育成する観点から、優良性評価制度を拡充していくべき


 今回のコラムでは、「優良性評価制度の改善の可能性」について解説します。


*優良性評価制度の改善の可能性


 前回のコラムでは、優良性評価制度の内容と、その普及状況などを解説しました。

 今回は、専門委員会で環境省が提案した、優良性評価制度の改善の可能性について解説します。

 環境省は、「廃棄物処理制度専門委員会」において、優良性評価制度のもっと普及させるために、以下のような改善をしたいと提案しました。

審査項目
1.情報公開期間は、申請の際に直前5年以上であることとしているが、6ヶ月以上と変更する。ただし、半期決算を含む財務諸表を1回以上更新していることが必要とする。
2.5年間分の情報の公開を行う能力があることを示すため、5年分の「処理の実績」「処理施設の維持管理に関する記録」「財務諸表」を適合確認申請時に、自治体へ提出することとする。
3.電子マニフェストシステムへの加入を、基準項目へ追加する。

4.適合確認を証明する書類
(現行)規則第9 条の2 第3項に掲げる基準への適合している旨 の一行だけ
(改善案) 「現行の記載」+「遵法性、情報公開性、環境保全への取組の各基準に適合」と明記


 
 環境省の提案内容を順にご説明していきますと

 まず、現行の優良性評価制度では、過去5年間継続して情報公開をしていないと、基準に適合しないことになっています。

 それではあまりに長すぎるということで、6ヶ月以上前から情報を公開していれば良いと変更し、情報公開に必要な期間を大幅に短縮するものです。


 次は2の内容ですが、1の情報公開期間を大幅に短縮させる代わりに、情報公開を行う能力があるかどうかの担保として、過去5年間の「施設の維持管理記録」や「財務諸表」などを、自治体に提出させることにするというものです。


 3の電子マニフェストに関しては、優良性の評価基準として、電子マニフェストを使用しているかどうかを、正式に評価項目の一つに盛り込むということです。


 最後の4ですが、これは基準適合事業者として公的に証明する記載方法を、現行の「たった一行」ではお粗末過ぎるので、あと2・3語言葉を追加するという程度です。


 これらの内容は、廃棄物処理法の施行規則を改正するだけで可能となりますので、おそらく実現する可能性は極めて高いと思われます。

 ただ、実務的に考えると、環境省がやろうとしている改善は、あまり意味が無さそうです。

 意味が無いというのは、この提案をすべて実行したとしても、「排出事業者」と「処理業者」の双方にとって、優良性評価制度をもっと使おうというインセンティブにはならないからです。

 環境省の姿勢に期待をかけすぎると、その期待は大きく裏切られることになるでしょう。


 しかしながら、「優良性評価制度はだからダメなんだ」と、諦めてしまうのは早計です。

 この制度に欠点があるのは事実ですが、個人的には、廃棄物処理業界の閉鎖性を打ち破るきっかけに成り得るシステムだと思っています。

 廃棄物処理業界の一番の問題は、廃棄物の処理工程を外部に明かさないなど、業界全体がブラックボックス化していることです。(残念ながら、いまだにその傾向があります。ただし、ブラックボックスであり、ブラック(闇)ではありません!)

 「あんな制度は無意味だ」と批判をするのは誰でもできます。

 既に、賢い経営者は、単なる批評家を気取るのではなく、優良性評価制度の価値と利用方法に目を向けています。

 運送業界の場合は、「貨物自動車運送事業安全性評価事業」にいち早く取り組み、安心して事業を任せる事業者の基準を自主的に作り上げました。

 特筆すべき点は、トラックなどに「Gマーク」を貼り付け、顧客や社会にしっかりとアピールすることを忘れていないことです。

 「優良な事業者」という存在は、まず、顧客や社会にその存在を認知してもらうことから始めねばなりません。

 このようなアピールをしたい場合、国の法改正が進むのを待つ必要はありません。

 アピール自体は、各事業者が独自にすればよいのです。

 例えば、「Gマーク」ならぬ、「W(Waste)マーク」をダンプに貼って、基準に適合した優良な業者であると、積極的にアピールしても良いのです。

 違法でもなんでもありません。


 システムは所詮「道具」ですので、「使ってなんぼ」です。

 「あれが悪い」「ここが悪い」と批判をする前に、まずは使いこなしてみることが重要なのではないでしょうか。


 
 運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
 著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」