廃棄物処理政策に関して検討されている論点(2)-3 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

尾上 雅典
行政書士エース環境法務事務所 
大阪府
行政書士

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閲覧数順 2024年04月24日更新

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廃棄物処理政策に関して検討されている論点(2)-3

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法令改正 2010年 廃棄物処理法改正

廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進(第3回目)




 ※関連記事
 (第1回目)廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進
 (第2回目)「経理的基礎」ってなに?
 (第4回目)欠格要件とは
 (第5回目)実現するか?収集運搬業許可手続の簡素化
 (第6回目)優良性評価制度とは
 (第7回目)廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進


 中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会 廃棄物処理制度専門員会において、「廃棄物処理業の許可制度の整備と優良化の推進」に関して検討されているポイントは以下の4点です。
・「経理的基礎」などの許可基準を明確にするべき
・行政は不適正処理への取締りをもっと徹底するべき
・欠格要件の見直しや、産業廃棄物収集運搬業許可手続の簡素化等、一定の合理化をするべき
・信頼できる産業廃棄物処理業者を育成する観点から、優良性評価制度を拡充していくべき


 今回のコラムでは、「行政は不適正処理への取締りをもっと徹底するべき」について解説します。


行政監視の動向とその影響について




 産業廃棄物などの不適正処理を監視する仕事は、一朝一夕にできるものではありません。

 法律的な知識が必要であるのは当然として
 「解体工事業の施工実態」や「廃プラスチックや木くずの有価取引動向」、
 その他「アウトローを目の前にしても動じない度胸」などが最低限必要となります。

 警察や税務署の場合は、捜査や徴税に特化した人員を育て続けることができますが、
 自治体などの一般的な行政庁の場合は、所掌業務が広範であり、人員と予算も限られているため、狭い分野の「スペシャリスト」よりも、広く仕事をこなせる「ゼネラリスト」を育てる必要があります。

 しかし、「廃棄物の監視」のような業務の場合は、「広く浅い知識」ではなく、「広く深い知識」を持ったゼネラリストでなくては務まりません。
 狭い分野のスペシャリストでも駄目なのです。


 広く深い知識を有する人材を育成するのは、短期間では無理です。
 最低でも、1年以上実務経験を積ませ、2年目以降にそこで学んだ知識を実践させ、3年目以降は自分の知識と経験を他の人員に伝えさせる必要があります。

 しかしながら、多くの自治体では、人員削減待った無しの状態であり、1年間の実務経験を積むのを悠長に待っていられない状況です。

 そして、経験と知識が無いにもかかわらず、1年目から単独で不適正処理の最前線に投入し、あやふやな知識を元に現場で指導を重ねた結果、廃棄物の不適正処理がさらに悪化・・・


 これが、全国各地の自治体で起こっている、人材のメルトダウン実態です。


 行政の人材は年々劣化するばかりですが、廃棄物の不法投棄などは一向に減る気配を見せません。

 「行政官に対して監視機能を期待できないならば、機械で変わりに監視すればよい」という、安直な発想が蔓延しつつあるのが現在の状況です。

 機械による監視とは、「人工衛星画像の活用」や「監視カメラの導入」などのことです。

 ※参考コラム 筆者が別途連載している「廃棄物管理の実務」
 宇宙から産廃不法投棄を監視...環境省が全国展開へ
 兵庫県も不法投棄監視に人工衛星活用へ


 このように、行政は機械を利用した監視能力を増強しつつあるわけですが、実際に関係者を指導するのは、機械ではなく、人間である行政官です。
 
 行政官の資質を上げずに、監視能力ばかりが増強させるとどうなるか?

 これまで以上に、法律の規定を偏った解釈をする行政官が増え、実態の一部のみを過剰に悪く評価し、「許可取消」や「警察への告発」といった、最終手段にいきなり訴えるケースが増えるだろうと思われます。


 監視能力を増強するのも結構なのですが、それ以上に、行政官の人材育成に熱意を注いでいただくことを、切に望んでやみません。

 

 運営サイト 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
 著書 「最新産廃処理の基本と仕組みがよ〜くわかる本」