凡人起業 −「カリスマ経営者」は見習うな!− - 経営戦略・事業ビジョン - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士

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対象:経営コンサルティング

寺崎 芳紀
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(経営コンサルタント)
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閲覧数順 2024年04月24日更新

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凡人起業 −「カリスマ経営者」は見習うな!−

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雑感 書評
世に様々な起業支援の書籍が出回っておりますが、変わった切り口の
本を紹介したいと思います。

多田正幸「凡人企業−「カリスマ経営者」は見習うな!−」
(新潮新書2009年6月)

です。

貿易商の家に生まれ、自分で事業を興すことを夢見ていた著者が、
脱サラに失敗して気が付いたこと。
父が成功したのは「変人なのに」ではなく「変人だから」だった、と。

起業を目指す方が陥りやすい罠を実体験をもって語る著者は、
大企業のサラリーマン、中小企業の経営者、中小企業のサラリーマンを経て
現在では、税理士として活躍されておりますが、
実体験に基づいて語ることの意味は大きい。

特に、本書第5章「税理士に経営指導を仰がない」は秀逸である。

私のように経営コンサルタント的な業務を増やしている税理士が
昨今増えておりますが、多田氏は「税理士が語れるのは「結果論」だけ」
(128ページ)と、にべもない。
それは、このような理由からだ。
「公認会計士や税理士など、事務系のスペシャリストと呼ばれる方は、
一般的に“机上の学力”に優れており、理論で処理できる事項に関しては
その能力を発揮することができます。会計、税務、法律、役所への提出、
文書作成、資金繰り計算、ややこしいお役所文章の読解などの作業は
事務方の得意とするところです。
しかし、彼らが業務上扱っているのは抽象的な文章や数値であり、それらは
実際の企業活動からはワンクッションはなれています。実際の企業活動を
直接的に把握できないのです。そのため、過去の数値を整理加工して
現在の経営状態を“結果論”で論ずることはできても、
“どうすれば会社の業績がよくなるのか”という将来の問いには
答えることができないのです。」(129-130ページ)

耳の痛いところだが、確かにそのとおりだろう。
私の経営指導も過去データに基づいた現状分析からスタートする。
実に痛いところを突かれたものだ。

ただ、ティーチングが主力になりがちな我々税理士の指導法は、
クライアントから話を引き出し、見えていないニーズを引き出すことによって
違う方向が見出せると思う。
コーチングの手法はクライアントとの折衝においては必須といえる。
また、経営学をはじめ、幅広い領域についての知識を持ちえる必要があろう。
残念なことであるが、自己啓発を含め、税理士の専門領域以外の分野に
対して自己研鑽を拡げている税理士は少ないように思う。
それだけに、多田氏が134ページ以下で書かれたスペシャリストを過信する
ことの怖さは、至言としか言いようがないほど、的を射たものである。

また、起業を考えている方には、第2章「必要な情報へのたどり着き方」
を特にオススメしたい。
ここについては、就職活動に苦戦する学生に対してもオススメである。

何が求められているのか、何を求めれば良いのか。

これがつかめれば、勝負に勝つまで頑張り続けるだけの精神力の問題だろう。

人並みはずれた精神力や努力する才能に恵まれない凡人にとって、
天才の経験は参考にすらならないことも多い。

私はよく後輩たちに
「天才は憧れの存在であって、自分と比較の対象にしてはならない」
と話します。

同じ税理士でも、開業してすぐから億を稼ぐ強者もおりますが、
私にはできません。
身近にいただけにライバル視したいという気持ちがないではないですが、
天才と競おうとしたら、こっちが死んでしまう。(実際倒れましたしね・・・)

こういう視点を踏まえてくれる本に出会えたのは実に久しぶりですね。