- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
産業廃棄物処分場の立地問題
最近、各地で産業廃棄物処分場の建設差し止め訴訟が相次いでいます。
訴訟ではありませんが、西日本新聞に気になる記事が載っていました。
築上町の産廃処分場 使用の意向 町側に伝達 北九州市の業者 町長「水源近く反対」
記事では、「使用の意向」と書いてありますが、「使用を検討」の方が正しい表現です。
「使用の意向」ですと、今すぐ使えそうな印象を受けますが、
実際は業者側のコメントのとおり、処分場の設置許可申請を先にすることが必要となります。
廃棄物を出さない産業はありません。どの産業、いえ国民全てにとって、廃棄物問題は避けては通れない課題です。
埋めるしかない廃棄物が日々発生し続ける以上、廃棄物の最終処分場を、どこかに立地する必要があります。
しかしながら、埋めるものが廃棄物であるため、どこでも自由に最終処分場を立地できるわけではありません。
最終処分場からは汚水が必ず発生しますので、排水処理対策が一番の要になりますが、水源地の近所に立地されてしまうと、何らかの事故により、人間が飲む水が汚染される可能性を否定できません。
もちろん、そうならないよう処理企業側は常に注意を払い続けていますが、地下で起こった事故の場合、すぐに発見することは困難です。
新聞報道を見る限り、処分場の設置を考えている企業は、
「住民の納得をいただけるよう、説明会は何10回でも開きたい」と述べ「理解が得られたと判断するまでは、県への設置許可申請はしない」と、大変誠意ある姿勢を示しています。
ただ、地元町長が「水源の川が処分場に近い」と、反対の理由を明確に表明していますので、処分場としての供用開始は非常に困難と思われます。
このようなケースの場合、事業者側は先に多額の経費をかけて用地取得を完了させてしまっていることが多く、「引っ込みがつかない」という状況に陥ることが多くなります。
社会的には必要な施設だが、立地できる場所が著しく限定される
無論、事業者側が事前に立地環境を調べなければならないのは当然ですが、市町村の側からも、水源地の場所などの「処分場を立地して欲しくないエリア」の情報公開を進めることが重要ではないでしょうか。
「環境を汚染してやろう」と、悪意を持って事業を行う企業はありませんので、余分な紛争を回避するためにも、「立地して欲しくないエリア(=ネガティブリスト)」を整備することは有効だと思われます。