プロダクト・バイ・プロセスクレームの権利範囲解釈6 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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プロダクト・バイ・プロセスクレームの権利範囲解釈6

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 米国特許判例紹介:プロダクト・バイ・プロセスクレームの権利範囲解釈
      〜限定解釈へ統一指針(大法廷判決)〜(第6回) 
   河野特許事務所 2009年6月16日 執筆者:弁理士  河野 英仁

          Abbott Labs., et al.,
           Plaintiff-Appellant,
              v.
         Sandoz, Inc., et al.,
           Defendant-Appellee.

(4)日本における取り扱い
 日本においては、CAFCと同じくクレームに記載した範囲に限定解釈する限定説と、クレームに記載した範囲に限定されない同一性説とが対立する。日本においては同一性説が有力であると述べた上で、南条*20は日本の過去の判例を挙げ、これら2つの説を対比分析している。佐藤*21は過去の判例及び学説を審査及び権利範囲解釈の両面で詳細に対比分析し、またドイツにおけるプロダクト・バイ・プロセスクレームの取り扱いを論じており非常に興味深い。

(5)中国における取り扱い
 中国におけるプロダクト・バイ・プロセスクレームに関する権利範囲解釈については筆者の知る限り、司法解釈*22で統一的な見解は示されていない。出願に際しては審査指南第二部分第二章3.1.1においてプロダクト・バイ・プロセスクレームの記載が認められている。

 例えば、物の請求項中の一つ或いは複数の技術特徴が構造及びパラメータを用いることができず、明確に表現できない場合、方法的な記載をすることができる。

 またプロダクト・バイ・プロセスクレームにおける新規性(中国専利法第22条第2項)及び創造性(中国専利法第22条第3項、日本における所謂進歩性)の判断に関しては、審査指南第二部分第二章3.2.5に記載されている。中国においてもプロダクト・バイ・プロセスクレームに記載された方法が、引用文献に記載された方法と異なろうが、物の構造・構成が同じである限り新規性は否定される。

 ただし、出願人が明細書の記載または出願時の技術水準に基づき、引用文献に記載された物と比較して、クレームされた方法により物の構造・構成が異なる物に変化したことを証明した場合、または、クレームされた方法が引用文献に記載された物と比較して異なる性能をもたらし、クレームに係る物の構造・構成が変化したことを証明した場合新規性が肯定される。

 審査指南にはわかりやすい例が挙げられている。クレームには「X方法により得られるガラスコップ」と記載されており、引用文献には「Y方法により得られるガラスコップ」が開示されていたとする。ここで、2つの方法により得られるガラスコップの構造、形状及び構成材料が同じである場合、新規性は否定される。

 その一方で、クレームに記載されたX方法が、引用文献に記載されていない特定温度での焼き戻しステップを含んでおり、これによって引用文献に記載されたガラスコップに対し、耐久性が明確に向上し、クレームされた方法により微視的な構造変化が生じ、先行技術に記載された物の内部構造とは異なる構造を備える場合、新規性は肯定される。なお、創造性の判断も当該基準に則って行われる。

判決 2009年5月18日
                                           以上