プロダクト・バイ・プロセスクレームの権利範囲解釈5 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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プロダクト・バイ・プロセスクレームの権利範囲解釈5

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 米国特許判例紹介:プロダクト・バイ・プロセスクレームの権利範囲解釈
      〜限定解釈へ統一指針(大法廷判決)〜(第5回) 
   河野特許事務所 2009年6月12日 執筆者:弁理士  河野 英仁

          Abbott Labs., et al.,
           Plaintiff-Appellant,
              v.
         Sandoz, Inc., et al.,
           Defendant-Appellee.

6.コメント
(1)2つの対立する解釈が本事件により統一された。今後は、プロダクト・バイ・プロセスクレームは、クレームに記載したプロセスに限定解釈される点に留意したい。ここで、新規性(米国特許法第102条)・非自明性(米国特許法第103条)の判断、及び、均等論について今後どのように解釈されるか述べておく。

(2)新規性・非自明性の判断について
 本判決後においても、従来と同じく、権利範囲がクレームに記載されたプロセスに限定されるとしても、特許性の判断は「物」そのものに基づき判断される。すなわち、プロダクト・バイ・プロセスクレームにより特定される「物」が、先行技術に記載された物に対し同一または自明である場合、特許性は否定される。

 審査官がクレームされた物が先行技術に記載された物と同一または近似すると判断した場合、クレームされた物が他のプロセスにより製造されていようが、自明でないことを立証する義務は審査官側から出願人側にシフトすることになる。このように、特許性判断の際には最終的な物自体が新規・非自明であることが要求され、しかも権利範囲はその製造方法により得られた物に限定解釈されることになる。

(3)均等論の適用について
 本事件において、プロダクト・バイ・プロセスクレームが、当該プロセスに限定解釈されようとも、最終的な物に関して均等論を主張することは可能である。

 均等論について簡単におさらいをしておく。特許権侵害の判断にあたってはクレームに記載された文言どおりに解釈するのが原則である。しかしながら、文言解釈を厳格に適用した場合、文言に合致しない迂回技術を採用することで第3者が容易に特許の網をすり抜けることができてしまう。

 このような不合理を回避するために、クレームの文言に加え、これと均等な範囲にまで権利範囲を拡張する均等論が存在する。米国における均等の判断は、均等物との相違が非本質的か否かにより判断する非本質性テストと、均等物が実質的に同一の機能(Function)を果たし、同一の方法(Way)で、同一の効果(Result)をもたらす場合に均等と判断するFWRテストと、の2つが存在する。裁判所はこれら2つのテストを状況に応じて使い分け均等か否かを判断する。

 本事件においては、507特許はA型結晶であり、イ号製品はB型結晶である。CAFCはA型結晶と、B型結晶とが均等であるか否かを判断した。

 507特許の出願人は、日本の特許出願S62-206199号に基づく優先権主張を行い、米国で507特許を取得した。この日本の特許出願の当初明細書にはA型結晶とB型結晶との2つが記載されていた。ところが、507特許に係る米国出願時にはA型結晶のみが記載され、B型結晶に関する記載は削除されていた。

 CAFCは出願人がB型結晶の存在を知りながら、審査の過程においてこれを削除したことは、B型結晶を放棄したものと判断し、均等論の主張を認めなかった。

 本事件では他国の出願に基づく優先権を主張して米国に出願する際の過程に対し、禁反言が考慮されている点に注意する必要がある。ただし本事件においてプロダクト・バイ・プロセスクレームが限定解釈されると判示された後においても、当該方法により得られる物自体には均等論の主張が依然として可能であることが示された。

                                   (第6回へ続く)  
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