ということは、病気の原因である生活習慣の乱れを改善するためには、社会との関係性そのものを検証し、改善することが必要になってきます。つまり、見かけ上食事量を減らしたり、運動をしたところで、社会関係性が歪んだままだと、いずれまた生活習慣の乱れが「再発」してしまうのです。
社会関係性の歪みとは、具体的には例えば、職場での人間関係の悪さや、仕事そのものへの不適合感、家庭での不和、自己実現感の欠如、他人への過度の羨望や嫉妬など、多くの例があります。そういうネガティブな感情は、誰にでも多少なりとも発生し得るものですが、それが一定の限度を超えると、生活習慣の乱れを生じ、さらには疾病の発症へと結びつくのです。
逆にいうと「病気」という現象は、そのような生活習慣の乱れ、さらには社会関係性の歪みがないかどうかを検証し、それらを改善する、絶好のチャンスと捉えることが可能です。つまり、病気はそれらの乱れや歪みの存在を知らせ、改善のための取り組みを促す一つのサインと捉えるべきです。
実際の臨床経験として、例えば胃ガンに罹って手術した人が、その闘病経験を活かして、食生活や運動習慣を改善し、さらには仕事や健康に対する考えを改めた、などという話はよく聞きます。まさに「一病息災」の好例です。逆に病気に対し過度の被害者意識をもち、生活習慣の改善や考え方を改めるためのチャンスを逸した人の場合は、概してその後の経過は良くありません。
その考えに従うと、医師など医療者の仕事というものは、患者が自らの生活習慣を改善し、社会との関係性を自ら改革するための、支援をするものだということが言えます。つまり、患者が自主的に自己変革するのをコーチする役割りなのです。まさに「健康コーチ」です。
N先生は、西洋薬には相当の役割りがあるとしながらも、それには限界があることを認めています。それを補う上で重要な地位を占めるものの一つが漢方薬です。漢方には「陰陽」や「虚実」といった「証」という座標軸があり、それに当てはまる薬を処方していく分かり易さがあるといいます。
上述のように、個人の生活習慣や社会関係性が、健康な生活を手に入れる上で大切だとなると、家庭や職場での「生きざま」が極めて重要になってきます。特に昨今の職場では、明らかに職業関連性と思われる病気や精神的トラブルが続出しています。
ということは、医師を始めとした医療人は、病院だけで仕事を完結させるのではなく、企業などの「生活現場で様々な貢献をすることが求められます。N氏は、企業内での自主的な健康への取り組みと、医療機関の診療との間の密接な連携が欠かせない、と説いています。
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
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