会社存続の危機。敵は身内にあり?遺留分合意制度とは - 遺産相続全般 - 専門家プロファイル

薬袋 正司
薬袋税理士事務所 
税理士

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対象:遺産相続

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会社存続の危機。敵は身内にあり?遺留分合意制度とは

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平成20年10月に中小企業庁が主体となり、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が制定され、その中の民法の遺留分に関する特例として遺留分合意制度が設けられました。
その内容はいかに。
遺留分とは、亡くなった人(被相続人)が遺言書を作成していた場合に発生する相続人の権利です。例えば配偶者既に死亡していて、子が3人(A、B、C)いたとしましょう。被相続人Xは会社の存続をAに託し、遺言書で「Aに財産をすべて相続させる」としたとします。この遺言書の内容は被相続人の自由です。遺言書が有効である場合、Aへの財産の移転は粛々と進められます。しかし民法では相続人の生活を守るために財産をもらわなかった、または少額をもらった人の権利として遺留分というものを認めています。親子の関係である場合、権利は法定相続分の2分の1です。このケースだと子3人ですから法定相続分は3分の1づつ、そして遺留分はその2分の1ですから3分の1づつあるということになります。財産をもらわなかった子BとCは、遺留分を侵している子Aに対し遺留分の減殺請求として財産の6分の1づつ請求することができます。「もらい過ぎだから返せ!」ということです。遺留分の対象となる財産は、被相続人の相続財産、1年以内の贈与財産、特別受益がありますが、詳しい内容は今回は触れません。
遺留分合意制度の内容ですが、2種類あります。除外特例と固定特例です。この合意の対象となるのは、中小企業者の株式です。中小企業者とは、資本金と従業員数で判定します。いくつか例を挙げると製造業、建設業、運輸業等(資本金3億円以下又は従業員数300人以下)、卸売業(同1億円以下、100人以下)、小売業(同5000万円以下、50人以下)、サービス業(同5000万円以下、100人以下)の会社です。中小企業のオーナーの財産は会社に集中しています。株式であったり会社の本社や工場の物件であったり。これが会社を継がない子供たちに分散されて所有権を主張され、または株主の権利を主張されたのではたちまち経営は成り行かなくなります。会社はオーナーのものでありながら、その後ろには従業員の生活や取引先の存亡もあり、いろいろな意味で社会に深く貢献しているのです。お家騒動で潰すわけにはいかないですよね。そこで社長は後継者である子1人に会社を託します。生前に贈与するのです。その際に足かせになる要因の一つが遺留分なのです。そこでこの特例の内容ですが(1)除外特例 会社の株式を遺留分の計算基礎に入れない (2)固定特例 合意時の時価で将来の相続後の遺留分計算の基礎とする(子Aが代表就任後に努力によって会社の業績があがり、その結果の値上がりは計算に入れないということです)という方法です。双方とも相続人全員の合意が必要ですが、合意が取れればA一人で手続きは出来ます。
その手続きは、その合意がこの制度の要件を満たすかどうか経済産業大臣の確認をとります。確認がとれたらその1ヶ月以内に家庭裁判所の許可を受ける必要があります。その要件の一つとして「強制附帯合意をしていること」があります。強制附帯合意とは、もし後継者の子Aが裏切って贈与・合意後に会社の代表権を放棄して経営にタッチしなくなるとか贈与を受けた株式を売却するなど会社の承継をしなくなったときは、その合意がなかったことにするという条項を入れたり賠償金の支払に関する条項を折込み、子Aが一人勝ちをしないようにする合意です。これは牽制として必ず入れなくてはなりません。その他任意附帯合意、こちらは任意でBC生前にもらった財産も遺留分の対象にしない旨等、この合意を円滑にするための相続人全員の心情を鑑み、衡平を図るための条項です。
相続は備えなければ一寸先は闇で何が起きるか分かりません。次世代の社長さん、先代の目の黒い内にできる対策はとりましょう。当事者間では納まりの付かないことも、親の言葉であれば子供は聞くものです。そしてスムーズに承継して経営に専念してください。