小説『ちっちゃな家』#1/3 - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

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小説『ちっちゃな家』#1/3

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<短編小説集>
SCENE-1:取材

 黒のマオカラースーツをまとったその男は、一頻り挨拶をおえると、受け取った名刺の
 わたしの名前のところに目をおとしたまま、じっと黙りこんでしまった。

  『スタイルハウシズ』編集部
      ライター 栂池弥生

『スタイルハウシズ』は、創刊まもない住宅誌。読者は、若い主婦層にしぼったものだ。
 わたしとゆみはいま、次号の特集の取材で、この『コトノハ舎』という住宅にきている。

「この住宅の設計は、どんなイメージですか?」 私は、かるくジャブを繰り出してみた。
「え。‥ああ、スタジオタイプ‥かな。マンハッタンのアパートメントのね。」
 重たい口をひらいたその男、福元甲一郎は、『コトノハ舎』を設計した建築家だ。
 どうやら、こいつの怪訝な表情は、そうかんたんにくずれそうもない。

「‥ね。いいでしょう、この天窓からの光。開放感がたまりませんね。最高ですよ!」
 取材に協力してくれたもうひとり、建て主の森下さんは、若手ビジネスマンタイプ。
 無愛想な建築家先生とは大違いの饒舌ぶりに、なんとか場が救われる。
「そういえば見ましたよ創刊号、本屋さんの店頭で。特集のタイトルが、たしか‥」
「『ローコスト住宅だよ。全員集合!』」‥カメラマンのゆみが、口をはさんできた。
「デスクのオヤジ達がイケてなくって、ホント、どうもスミマセン。
 今回の特集は、私とこのツガッチで『ちっちゃな家』ってことで、ねじこんだんです。
 あやうく『狭小住宅ヒットパレ〜ド!』‥ですよ、モさいあく。」
 ゆみは、一気にまくしたてると、EOS 50Dにシフトレンズをセットしはじめていた。
 口はわるいが、彼女の仕事はたしかなところだ。

「建築家の福元さんには、どのような経緯で設計の依頼を?」
「いや、ネットでね。福元さん、独立する前はニューヨークの事務所で修行されたそうで、
 発想がいいな…、と。彼なら、この小さな敷地でなんとかしてくれると思いまして‥」
 福元のほうに目くばせしながらも、森下さんは、わたしの質問に丁寧にこたえてくれた。
 聞けば小さな広告会社を主宰しているとのこと。どうりで、インタヴュー慣れしている。

 それにしてもこの住宅。ほんとに、いい設計なのかしら‥。
 わたしがの吹抜けの天窓を見上げているときも、この建築家先生は眼鏡を気にしながら、
 ずっとうなだれている。 いったい、なにを考えてるのやら。

 つづく

 ※この文章は、フィクションです。
 『コトノハ舎』という住宅が存在すること以外、設定や登場人物はすべて架空です。

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