- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
また、いくらVOCに配慮して家造りに取り組んだとしても、家具に使用されている接着剤や防虫剤、カーテンやカーペットに含まれる防炎剤、衣類の防虫剤やトイレの芳香剤といったように家の中に持ち込まれるものにも多量の化学物質が含まれており、そうしたものをひとつひとつ完全に排除することは極めて困難であると言えます。そして、例えそれができて化学物質過敏症が防げたとしても、それだけではもっと多くの病気や不健康を担っているカビやダニを防ぐことはできません。
自然素材を使おうという流れが、「室内空気汚染の問題が住宅の気密化が促進されることによって起こった」として反高気密を促すものであっては、私達はやはり健康な住まいを手に入れることはできないのです。
こうした問題は「気密化」そのものに原因がある訳ではではなく、「暖房」に原因がある訳でもありません。問題は「換気」を忘れたまま気密化への道を歩み始めたことにあるのです。この重要なポイントを保留にしたままいくら自然素材で家を建てても仕方がないのです。しかし日本の住宅は、未だにこの基本的な問題に気付かずに中途半端な、それがために最悪の生活空間を維持し続けているのです。