あえて厳しく叱って指導するという新人研修が、テレビや新聞記事で紹介されていました。何でも最近の新入社員は、ゆとり教育世代で叱られる事に慣れておらず、「積極性に乏しい」、「おとなしい」、「打たれ弱い」と言われることが多いため、実践さながらに厳しく叱って指導することで、配属後に感じる現実の厳しさを知り、精神的圧迫への耐性をつけることなどが目的だそうで、問い合わせも多いらしいです。(もちろん具体的事実に基づいて叱るなど、叱り方のテクニックには十分配慮されているとのことです。)
私も同じように感じる事が往々にしてありますし、こういう研修をやりたくなる気持ちもわかります。ただ一つだけ理解できないのは、「ゆとり教育世代で叱られ慣れていない」という点です。なぜゆとり教育だとそうなるのでしょうか。「褒めて育てるが行き過ぎた?」、「教師の質?」、「親や家庭の教育のせい?」、「少子化の影響?(大人たちの構い過ぎで自律を阻害する)」、「個人主義的な風潮?(社会経験を積む機会が少ない)」・・・。
たぶん理由は一つでなく、ここに挙げた全てのこと、それ以外のことも様々な要素が絡まっているのでしょう。なぜこういう人が増えてきたのかはよく考える必要があると思います。
認識しなければいけないのは、「昔なら当たり前と思っていたことでも、いちいち教えて訓練しなければならない」ということです。当事者たちに悪気はありませんし、責任も問えません。ただ経験した事が無いから、知らないし、できないし、耐性も無いのです。
会社としてこんな手間を掛けたくないと考えるなら、そのような人を採用しなければ良いはずですが、今の世の中で残念ながらそれでは思った人数が集められません。会社は「学校で教えられるべき事」と考え、学校は「家庭で教えられるべき事」と考えますが、結局は社会の一員である自分たちが、次の世代に経験させたり教えたり出来なかった事が、社会全体の問題として返ってきているのです。しわ寄せの先が企業まで達してしまったということですから、社会的責任として取り組んでいくしかないのだと思います。
これからの社員教育では「こんなことも知らないのか」、「常識だろ」などと言わず、社会性の基礎になる部分についても、教えていく覚悟が必要なのだと思います。
最後に社会的責任ということでいえば、自分も家庭では子を持つ親ですが、親の責任としてきちんとしなくては、でも出来ているだろうかなどと考えてしまいました。教育と言うのは本当に難しいテーマですね。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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