巷では手術で使用するような本格的なマスクが飛ぶように売れ、空港では何時間もかけて機内の厳重な「検疫」が行なわれるなど、日増しに物々しくなってきました。何とかこの未曾有の新型ウイルスを「水ぎわ」で阻止しようと、個人も国も必死です。
毎年暮れに配布され、病院などで注射されるインフルエンザ・ワクチンは効果がないのかというと、一般的なワクチンは残念ながら効果が期待できません。正確にいうと、あと半年くらいすれば有効なワクチンが作られる可能性はありますが・・
インフルエンザ・ワクチンというのは、昨年から今年前半にかけて流行したインフルエンザ・ウイルス株をもとに作成されます。従って、昨シーズン流行ったウイルスに対しては効果が期待されますが、数年〜十数年に一度流行するとされる「新型ウイルス」や「鳥インフルエンザ」に対しては効果が期待できません。それはウイルス表面の「抗原」というタンパク質が、大きく変貌してしまうからです。
ニュースなどでお馴染みとなった「H1N1」という用語は、この細胞表面の抗原の型を表したものです。新型ウイルスは「Aソ連型」と同じタイプですが、毎年のように流行する「A香港型」とは明らかに異なります。「A香港型」向けのワクチンを注射しても無効なのです。
それでは「新型インフルエンザ」が本格的に日本で流行した場合、私たちはどうすれば感染を防ぐことが出来るのでしょうか?「タミフル」や「リレンザ」を飲めば何とかなる・・と考えてはいけません。これらの薬は、若年者を中心に深刻な副作用が報告されているし、時間とともに「耐性」が生じるのは宿命的ですので、結局は当てになりません。
従って新型ウイルスに対して、我々は本質的に、もっと別な取り組みをしなければならないのです。これは新型でなくとも、通常のインフルエンザでもいえることですし、一般の風邪、あるいは細菌やウイルスなどの感染症全般(肺炎や腸炎、肝炎など)にも通ずる話です。
その或る「取り組み」に関しては次回以降、順を追ってお話いたします・・(続く)
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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