遺産再分割における更正の請求の可否 - 遺産相続全般 - 専門家プロファイル

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遺産再分割における更正の請求の可否

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発表 実務に役立つ判例紹介
今日は、一度相続税の申告をした後、当初の申告は税理士が配当還元方式を
適用できるものと誤認したために誤っており、誤った指導の下に合意された
遺産分割決議が取り消され、配当還元方式が適用できる形での再度の
遺産分割の合意の下に更正の請求又は修正申告をした場合に、更正の請求が
認められるかどうかが争われた、東京地裁平成21年2月27日判決
(TAINSコードZ888-1414)を紹介する。

本件は、以下のように判示され、遺産分割協議自体の無効を主張することは
できないが、約19億円もの税額の差異は遺産分割協議の要素の錯誤に当たり、
株式の配分の変更に関する更正の請求が認められている。

以下では、判決の要旨を見ていこう。

1 本件は、被相続人の妻(原告乙)が取得する本件同族会社の株式の価額
につき、配当還元方式による評価を前提として第一次遺産分割をし相続税
の申告をした後に、配当還元方式の適用を受けられず、類似業種比準方式
による高額の租税負担となることが確認されたため、配当還元方式の適用を
受けられるように各相続人が取得する株式数を調整した上で新たな遺産分割
の合意(以下「第2次遺産分割」という。)に基づき、更正の請求期間内に
原告らが更正の請求又は修正申告をした事案である。

2 原告乙が遺産分割により取得する株式について、配当還元方式による
評価によることが、第1次遺産分割に当たっての重要な動機として明示的に
表示され、かつ、その評価方法についての動機の錯誤がなかったならば
相続人らはその意思表示をしなかったであろうと認められるから、
第1次遺産分割のうち株式の配分に係る部分は要素の錯誤があったと
認めるのが相当である。

3 分割内容自体の錯誤と異なり、課税負担の錯誤に関しては、それが
要素の錯誤に該当する場合であっても、申告納税制度の趣旨・構造及び
税法上の信義則に照らすと、申告者は、法定申告期限後は、課税庁に対し、
原則として、課税負担またはその前提事項の錯誤を理由として当該
遺産分割が無効であることを主張することはできず、例外的にその主張が
許されるのは、分割内容自体の錯誤との権衡等にも照らし、(1)申告者が、
更正請求期間内に、かつ、課税庁の調査時の指摘、修正申告の勧奨、
更正処分等を受ける前に、自ら誤信に気付いて、更正の請求をし、
(2)更正請求期間内に、新たな遺産分割の合意による分割内容の変更をして、
当初の遺産分割の経済的成果を完全に消失させており、かつ、(3)その
分割内容の変更がやむを得ない事情により誤信の内容を是正する一回的な
ものであると認められる場合のように、更正請求期間内にされた更正の請求
においてその主張を認めても弊害が生ずるおそれがなく、申告納税制度の
趣旨・構造及び租税法上の信義則に反するとはいえないと認めるべき
特段の事情がある場合に限られるものと解するのが相当である。

4 認定事実によれば、本件会社の株式の評価に係る配当還元方式の適用は、
その適用の有無により評価額に合計約19億円の差異が生じることから、
遺産分割における重要な条件として当初から相続人らの間で明示的に
協議されていた事項であり、相続人らが当該株式の評価方法を誤信して
第1次遺産分割の合意に至ったのは、本件税理士の誤った助言に起因する
ものであり、事柄の内容も税務の専門家でない相続人らにとって同税理士の
助言の誤りに直ちに気付くのが容易なものとはいえないことであったこと、
遺産分割の協議に際して、相続人らは、第1次遺産分割に基づく当初の
申告を経て、自らその誤信に気付いた後、速やかに、配当還元方式の適用を
受けられる内容に当該株式の配分方法を変更した第2次遺産分割の合意に
至っていることが認められ、これらの経緯に照らすと、第1次遺産分割から
第2次遺産分割への分割内容の変更は、やむを得ない事情により誤信の内容
を是正する一回的なものであったと認められ、本件上記3(3)に該当するものと
認められる。

5 認定の事実関係の下では、本件は、上記3(1)ないし(3)のいずれにも
該当し、更正の請求において課税負担の前提事項の錯誤を理由とする
遺産分割の無効の主張を認めても弊害が生ずるおそれがなく、申告納税制度
の趣旨・構造及び租税法上の信義則に反するとはいえないと認めるべき
特段の事情がある場合に該当するものというべきである。

6 原告乙が更正請求期間内にした国税通則法23条1項1号の規定による
更正の請求により、処分行政庁は、第1次遺産分割のうち本件会社の株式の
配分に係る部分が無効であり、当該株式の配分については第2次遺産分割の
内容に従って計算がされるべきことを前提として相続税額の減額更正に
応ずべき義務を負うに至ったものと解するのが相当である。




判決によれば、税理士が誤った指導をしたことにより、株価評価を誤った
相続人たちがなした遺産分割協議のうち、株式の配分についてのみ
更正の請求が認められたのである。

これは事業承継対策等において注意しなければならない点であろう。

中小企業のオーナーの相続において、多くの場合、事業用資産は事業継承者が
引き継ぐものの、それ以外の財産については、事業継承者以外の相続人が
引き継ぐことになることも多い。
それでも相続される財産の価額に開きがあり、円満な相続にならず、
将来に禍根を残すケースが後を絶たない。

それだけに、遺産分割協議において、株価評価は重要なファクターになる。

株価評価が間違っていれば、遺産分割の合意内容に大きな変更が加えられる
可能性が避けられないのである。

しかし、判決によれば、株価評価のミスによる遺産分割のやり直しであれば、
株式の配分に関してしか更正の請求が認められない。

そうすると、株価評価のミスのために、相続税を二重に支払わざるを得ない
ケースも考えられることになってしまうのだ。

この場合、納税者の権利を保障する手段はなく、誤指導をした税理士に対する
損害賠償請求しか救済の手段が残されていないことになるのだ。

最高裁平成16年7月20日判決、いわゆる平和事件最高裁判決では、
税務担当者に対して、学説や判例に照らして総合的に判断することを
要求したが、まさにこの事例も、税理士が判例を研究しなければ、
専門家としての説明責任を果たせないことを示した事例の1つである。

我々税理士はこのことを重く受け止めなければならない。

理論武装は納税者のためだけではなく、自己防衛のためにも必要なのだ。

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