ヒトラーの経済政策 - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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ヒトラーの経済政策

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雑感 書評
今日は、600万人の失業問題を解決し、大恐慌で崩壊した経済を短期間で
再建した実績を研究した本を紹介します。

ヒトラーの経済政策―世界恐慌からの奇跡的な復興―
武田知弘著、祥伝社新書2009年4月

私も本書を読み、ナチスに対する思い込みがナチスの評価を不当に
貶めていたことに気付かされました。

ナチスの行った残虐行為は許されるものではありませんが、
こと開戦以前の経済政策に関しては、現在にも応用できるものが多く、
疲弊したわが国の経済構造の建て直しに役立てるヒントが満載されている
ことに驚かされました。

武田氏もまえがきの中で、

筆者は、ナチスの残虐行為について、擁護したり肯定したりするつもりは
毛頭ない。
しかし、だからといって彼らの行為がすべて否定されていいということ
ではないだろう。
アドルフ・ヒトラーやナチスという存在は、後世において「全否定」に
近い評価をされてきた。
が、彼らは、一時的にせよ、ドイツ経済を崩壊から救い、ドイツ国民の
圧倒的な支持を受けていたこともあるのだ。
彼らの行為の中には、後世の経済政策のヒントになるようなこともたくさん
あるのではないだろうか。

ヒトラーが政権を取ったとき、ドイツは疲弊しつくしていた。
第一次世界大戦で国力を使い果たした上に、多額の賠償金を課せられた。
ようやく復興しようとした矢先に世界大恐慌に襲われた。
ドイツという国はボロボロの状態になっていたのだ。
しかし、ヒトラーが政権を取るや否や、経済は見る間に回復し、2年後には
先進国のどこよりも早く失業問題を解消していたのである。
ヒトラーの経済政策は失業解消だけにとどまらない。
ナチス・ドイツでは、労働者の環境が整えられ、医療、厚生、娯楽などは、
当時の先進国の水準をはるかに超えていた。
国民には敵的にがん検診が行われ、一定規模の企業には、医者の常駐が
義務づけられた。
禁煙運動や、メタボリック対策、有害食品の制限などもすでに始められていた。
労働者は、休日には観劇や乗馬などを楽しむことができた。
また毎月わずかな積み立てをしていれば、バカンスには豪華客船で
海外旅行をすることもできた。
思想的な是非はともかく、経済政策面だけに焦点を当てた場合、ヒトラーは
類まれなる手腕の持ち主ということになるだろう。
(3-4ページ)

と記し、ヒトラーの経済政策という視点からの再評価をすべきことを指摘する。

また、あとがきでは

ヒトラーの経済政策の基本原理は非常に単純である。
「生活に困っているものをまず助ける」
ということだ。
これは経済の理にかなっているものでもある。
生活に困っているものは、もしお金が入ったらそのほとんどを生活費として使う。
それは消費を喚起することになる。
つまり生活に困っているものを助ければ、消費が増え、社会全体が
活性化するのだ。
景気を喚起するために財政出動するとき、もっとも効果があるのは、
低所得者層に向けて支出をすることだ。
それを明確に実証したのが、ヒトラーだといえるだろう。
これは太古から善政の見本のようにいわれてきた政策である。
しかし、ほとんどの政治家はいろんなしがらみがあって、
なかなかこれができない。
それをヒトラーはやってのけたのである。
この点については、現代の政治家もぜひ見習ってもらいたいと思う。
(246ページ)

と記す。
ヒトラーが大衆に支持されて武力によってではなく、民主的に選ばれた
国家元首であったからこそ、政権奪取当初の政策が機能したのである。

ただ、ナチスの場合、戦争に突入してからは、思想的なこともあって、
迷走してしまったのだが。

こと経済政策だけに絞ってみると、戦争前の財政を取り仕切ったシャハト氏の
手腕によるものが大きいとはいえ、見るべきことの多い政策であった。

今の疲弊したわが国経済を立て直すためにも、ナチスによるドイツ経済の
復興計画は、大変参考になるのではないか。

ただ、それがばら撒きになりそうで怖いところでもあるのだが…