- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
在宅医療廃棄物の適正処理
規制改革推進3か年計画重点計画事項から抜粋
家庭から排出される一般廃棄物である在宅医療廃棄物の取り扱いについて、平成17年に「在宅医療に伴い家庭*1から排出される廃棄物の適正処理について」が通知されており、[1]注射針など鋭利な物は医療関係者あるいは患者・家族が医療機関へ持ち込み、感染性廃棄物として処理する、[2]その他の非鋭利な物は、市町村が一般廃棄物として処理する、という方法が望ましいとしている。
この通知後の追加調査によると、処理の適正化には一定の成果が上がっているが、依然として処理の実態を把握していない自治体が多く存在することから、適正な処理に向けた課題の解決方法を検討し、手引集を作成するなどして自治体に対して周知する。
家庭で使用した注射器などの医療廃棄物は、「一般廃棄物」になります。
その中でも、使用済み注射針など病気の感染可能性があるものは「特別管理一般廃棄物」として、慎重に処理する必要があります。
しかしながら、普通のゴミ出しの日に、他のゴミと一緒に注射針などを出されてしまうと、それを回収する人の手に針が突き刺さるなどの事故の原因となります。
実際、一般廃棄物を回収する方が、回収作業中に針が手に突き刺さり、「肝炎」などに感染してしまう事例が現実に多く存在します。
このような背景を考えると、市町村が感染性廃棄物の回収に躊躇してしまうのも無理はありません。
一口に「医療廃棄物」と言っても、「注射針」のような鋭利で感染性の危険がある廃棄物から、「ビニールパック」など感染性がない普通の廃棄物まで、色々な種類の廃棄物に分かれます。
そこで、環境省は、平成17年9月8日に、「在宅医療に伴い家庭から排出される廃棄物の適正処理について」という通知を出し、(環境省が通知を掲載していないので、岐阜県のHPのURLを記載)
・注射針などの鋭利な廃棄物については医療機関へ持ち込み、医療機関はそれを産業廃棄物処理をする
・危険性が無い医療廃棄物については、従来どおり市町村が回収処理にあたる
ことを推奨しました。
その後、平成19年8月6日に、環境省から「在宅医療廃棄物の処理に関するアンケート調査結果について」が発表され、上記の方針に従って在宅医療廃棄物を処理している市町村は31%しかないことを明らかにしました。
在宅医療廃棄物の適正処理を更に推進するため、環境省は、平成20年3月に「在宅医療廃棄物の処理に関する取組推進のための手引き」を取りまとめ、各自治体の努力を促しているところです。
本来、「一般廃棄物」を「産業廃棄物」として処理することはできないのですが、今回の在宅医療廃棄物の処理方法については、「安全で適切な処理」をするために、法律の運用を若干緩めた好例として考えることができる事例です。
他の廃棄物についても適用することができる可能性を帯びた貴重なケースだと思います。
※執筆者:尾上雅典 産業廃棄物許可コンサルティングセンター
*1原文では「改定」と誤記されているため、筆者が修正