「この話は役に立つのか」と言い続ける人が損していると思ったこと
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まだコロナ禍以前で集まりが頻繁にあった頃ですが、ある会合のセミナーの後に、いつものように懇親会がありました。
そこで以前から何度か見かけたことがある、たぶん年齢60代前半くらいと思われる男性が、私に「今日のセミナーの内容は、皆さんは聞いていて役に立つのですか?」と聞いてきました。
セミナーテーマは当然事前に告知されていますし、この時の内容は、心理学的な知見をコミュニケーションやマネジメントに活かそうというもので、多くの人に何らかの形で役立つものではないかと思います。ただ、この男性にとってはそうではなかったようです。
私自身は、わりと好奇心があってどんな分野の話でも興味を持って聞く方で、その道の専門家の話は、必ず一つや二つは学びになることがあります。ただこの男性は、「自分にとっては何が面白いのかさっぱりわからない」「もっと自分の専門分野につながる話が聞きたい」などと言います。まったく共感できることがなかったのでしょうが、他の聴講者の反応から見ても、かなり異質の捉え方です。
セミナーテーマは初めからわかっている訳で、「それなら聴きに来なければいいのに・・・」と言いたいのを飲み込んでいました。
その後、この男性は別の女性にも同じ話をしていましたが、その女性からこんな反論をされていました。
「自分の知らない話だからこそ、面白いのではないですか?」
「自分の専門分野の話は、そのつもりになればすぐ聞けるのではないですか?」
「私は自分が知らない分野な話だったので、興味深くてものすごく面白かったです!」
「自分の仕事に活かせそうなことが、いくつもありました!」
このやり取りを聞いていて思ったのは、情報を自分の身になるようにするには、結局はその人の受けとめ方次第ということで、少し言い方を変えると、「いかに自分事に置き換えることができるか」です。
さらに言えば、「何でも面白くないという人は、何でも面白いという人より損をする」と思います。
たぶんこの男性にとってはあまり興味がない話で、何に活かせるかをイメージできず、自分事にはできなかったのでしょう。あまりにも自分からかけ離れた話題だったのかもしれません。それを責めることはできませんが、もともとの好奇心が、あまり幅広くなかったのではないでしょうか。
一方反論した女性は、もともと自分の興味が強い分野だったのかもしれませんし、直接的に役立つ話だったのかもしれません。ただ、自分事として取り込む力と好奇心の広さがあることはわかります。「知らない話が面白い」というのは一種の知的好奇心であり、過去からの経験を通じて、そういう受けとめ方をするようになったのではないでしょうか。
この受けとめは、少しの意識だけで意外に変えることができます。自分の身の回りのことと重ね合わせたり、過去の経験と突き合わせたりすれば、自分事につなげることができます。そこに「面白い」「役に立つ」という成功体験が加われば、好奇心の幅も広がります。
これは個人的な話ですが、「あの時に興味がないといって何もしていなければ、その後の大きな展開はあり得なかった」ということが、これまでに何度もありました。
とりあえず話を聞いてみて、参加してみて、それを受け入れた上であらためて考えることが、何か良いことにつながるように思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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