差し止め中の改正規則は米国特許法に反するか?-7- - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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差し止め中の改正規則は米国特許法に反するか?-7-

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米国特許判例紹介:差し止め中の改正規則は米国特許法に反するか?

        Triantafyllos Tafas. et al.,
        Plaintiffs-Appellees,
             v.
         John J. Doll. et al.,
          Defendants-Appellants.

    〜継続出願の回数制限は違法か〜(第7回) 
河野特許事務所 2009年4月21日  執筆者:弁理士  河野 英仁


(3) 規則75及び規則265・・クレーム数に基づくESDの提出要求
 ESDの提出要求は米国特許法に反するものではない。
 地裁はESDの要求は、米国特許法第112条等の規定に反すると判断した。

 米国特許法第120条パラグラフ2は以下のとおり規定している。
「明細書は,出願人が自己の発明とみなす主題を特定し,明白にクレームする1 又は2 以上のクレームで終わらなければならない。」
 地裁は、USPTOが一出願においてクレーム数に制限を課すことは当該規定に反すると判断した。

 しかしながら、CAFCは、ESDの提出要件はクレーム数の制限を課すものではなく、米国特許法第112条パラグラフ2とは無関係であると判断した。つまり、規則75及び規則265は、単に5を超える独立クレーム、またはクレーム総数が25を超える場合に、ESDを提出すべしと規定しているにすぎない。

 さらに、地裁は、規則75及び規則265は出願人に先行技術調査を命じ、さらに独立クレームに対する特許性についても言及するよう命じている。地裁は、当該規定は出願人に過大な負担を与えるものであり、また出願人は一般に、そのような「先行技術調査を実行する義務はない」と判断した。

 しかしながら、CAFCは出願人に審査処理に必要な情報の提出を要求することができる旨を規定する37 C.F.R 1.105を根拠に、出願人がESDの提出を拒むことができる合理的理由はないと判断した。

 37 C.F.R 1.105の規定は以下のとおりである。
「1.105 情報提出の要求
(a)(1) 35 U.S.C.第111 条若しくは第371 条に基づいて提出され,係属中であるか若しくは放棄される出願(再発行出願を含む。)に関する,特許に関する,又は再審査手続に関する事項を審査又は処理する過程で,審査官又は他の特許商標庁職員は,§1.56(c)に基づいて指定されている個人又は譲受人に対し,当該事項を適切に審査又は処理するために合理的に必要な情報,例えば,次に掲げるものを提出するよう要求することができる。」

 最後に地裁は、ESDは審査義務を審査官から出願人にシフトするものであり、米国特許法第102条及び第131条の規定に反すると判断した。

米国特許法第102条の規定
「次の各項の1 に該当するときを除き,人は特許を受ける権利を有するものとする。」
米国特許法第131条の規定
「特許商標庁長官は,出願及び新規であると主張されている発明の審査をさせなければならない。」

 その他、地裁は、USPTO側に、一応の非特許性の証明”prima facie case of unpatentability”を示す義務があるとの判例を根拠に挙げた。

 CAFCはUSPTOの審査官側に、一応の非特許性の証明提出義務があるという点に関しては、地裁の判断に同意した。しかしながら、規則75及び規則265に基づくESD要件が、審査義務を審査官から出願人へシフトしているという点には同意しなかった。

 ESDにおいては先行技術調査の他、特許性に対する言及もが必要であるが、例えば重要な先行技術文献が提出されない場合、または、先行技術に対する言及に審査官が納得しない場合でも、これらのことを根拠に出願は拒絶されないからである。

 その上、新たな規則下においても、審査官は米国特許法第131条の規定に従い、出願を審査しなければならないからである。出願人は、審査官が一応の非特許性の証拠を示さない限り、依然として「特許を受けることができるentitled to patent unless・・」(米国特許法第102条)のである。

 以上のとおり、CAFCは、ESD要件は、現状の審査手続きに加えて新たな義務を課すものであるが、審査義務をシフトするものではなく、かつ、米国特許法の規定に反するものではないと判示した。


(第8回に続く)
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