グーグルが見つけた「心理的安全性」で自分が経験したこと
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グーグルが以前おこなった、生産性の高いチームの共通点を探すプロジェクトの一つの結論として得られた「心理的安全性」という言葉は、ずいぶん一般的に使われるようになりました。
「心理的安全性(psychological safety)」は心理学用語ですが、チームメンバーの一人ひとりが、そのチームで気兼ねなく発言できる、本来の自分を安心してさらけ出せるといった雰囲気や、他者への心遣いや共感、理解力といったものを指しています。
押し付けではない暗黙のルールとして「心理的安全性」が醸成されていることが、チームの生産性を高めることにつながるという結論でした。
この「心理的安全性」については、私の今までの経験でも、思い当たることが多々あります。
一つ挙げれば、あるチームに押しが強くて独断的な性格の人がおり、その人がメンバーとして参加しているうちは業績が良かったものの、リーダーになった途端にチームが分裂状態となり、業績が急降下してしまったということがありました。
彼がメンバーのうちは、同じ立場のメンバー間の意見を代弁していたり、話し合いの中心になったりすることで、意見を言いやすい雰囲気作りに貢献していましたが、リーダーになってからは独断に走ってメンバーの話を聞かないことが増えていったため、チーム内のコミュニケーションと信頼関係がなくなってしまったのです。
「心理的安全性」という観点で見ると、初めはまさにそれが存在していたのに、ある人の立場が変わったことで、それが消えてしまったということです。
この「心理的安全性」の雰囲気を作り出すことが有用だとわかっても、その実践にはそれなりの難しさがあります。相手に「遠慮せずに何でも話して」といったところで、相手が心からそう思ってくれるとは限りません。
「心理的安全性」と作り出すためにできることとして、一つ思いつくのは「まずリーダー自身が本音をさらけ出すこと」です。
ある記事で紹介されていたことですが、あまり生産性が上がらないあるチームのリーダーが、自分の健康上の深刻な問題をメンバーに告白したところ、他のメンバーたちも自分のプライベートな事柄を話し出し、その後は本音の議論ができるようになっていったそうです。
その人の本音を聞いたら、あまりにも受け入れがたい内容だったといったことがあるかもしれませんが、本音が表に出ることには意味があります。
「心理的安全性」の大切さは、苦労を重ねた検証によって科学的に裏付けられた結論ですが、いかにも人間らしいものだったということが印象的です。
こうやって、あいまいな経験則の中にあったことが検証されて具体的に説明されることには、無用な試行錯誤を減らす効果があります。こういった取り組みが進んでいくのは、好ましいことだと思っています。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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