- 伊藤 健之
- ユー・ダブリュ・コンサルティング 代表
- 経営コンサルタント
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
こんにちは。グランデコンサルティングの伊藤健之です。
まず初めに、Jリーグ大分トリニータ監督のシャムスカ氏が語る「日本人を率いる哲学」を紹介
し、日本人に合ったリーダーシップ論について考えてみます。
ブラジルのクラブチーム監督であったシャムスカ氏は、2005年9月に大分トリニータの監督に
就任する。J2降格の危機にあったチームを救い、2008年にはナビスコ杯で優勝を果たすまで、
大躍進させた「赤丸急上昇」の監督なのです。
「カネを使って大型補強をしたわけではない」
「ブラジル流を持ち込んだわけでもない」
「シャムスカ氏が大分を躍進させたのは、この国を十分に理解したからであった」
彼の日本人操縦術とその哲学から、組織マネジメントの洞察を得てみたいと思います。
*まずは、シャムスカ氏の、このコメントをご覧ください
日本の経済集団が、家族型経営からドライなアメリカ型達成式に方向転換したとたん、大失速
し始めたことを見ても分かるように、この民族は、帰属する場所のアイデンティティを強め、
結束を固めた上で役割を与えてこそ、力を大きく発揮するのだ。
(09年4月号の「Number」のインタビュー記事より抜粋)
ビジネス経営者ではなくプロサッカーの監督、しかも3年半前にブラジルから来たばかりの人
の発言というのが衝撃的でした。ものすごく本質を突いたコメントだな、と。
「活力みなぎる組織づくり」において、私が特に重視しているポイントと、ほぼ同じことを、シャ
ムスカ氏は指摘しているのです。
**《私の主張を再掲しますと・・》
人がある集団に属し、何らかの役割を期待され、それを果たすことで認められることにより、
人は自分が役立っていることを実感(有用感)し、アイデンティティを確認(自己確認)できる。
これにより組織への貢献意欲が増進し、人はパフォーマンスを発揮するものである。
*シャムスカ氏のリーダーシップ論
リーダーと呼ばれる人間の多くは、自分の考えを元に人を動かしていこうとする。
しかし、私のリーダーシップのとり方は、みんなの意見を汲み上げて、それをどういう風にや
ればいちばん良いのか、方向づけるという方法だ。
トップダウンで押し付けるのではなく、選手に考える余地を与えて、こうやった方が良いので
はないかとサポートする。
選手間でお互いに話し合うことで、気持ちを高めることができる。
今はそれができているのではないかと思う。
(09年4月号の「Number」のインタビュー記事より抜粋)
サッカー王国ブラジルからきた指揮官が、トップダウンではないのですから驚きです。
上意下達にせず、選手間のコミュニケーションを活性化させて自分たちで問題解決に当たら
せる。そこに至る信頼関係を重視するがゆえに、シャムスカ氏は、ファミリー、友愛を強調して
います。何より、彼はチームで「友情を育む」ことを説いているのです。
「トップダウンで押し付けるのではなく、選手に考える余地を与える」
「選手間でお互いに話し合うことで、気持ちを高めることができる」
「選手間のコミュニケーションを活性化させて、自分たちで問題解決に当たらせる」
====
これらは、私が実践のお手伝いをしている「小集団活動」そのものです。
「みんなの意見を汲み上げ、方向づける」
====> これは「ラウンドテーブル」で実践していることと同じです。
「こうやった方が、よいのではないかとサポートする」
====> これは「ラウンドテーブルにおけるトップマネジメントの役割」と全く同じですね。
「プロは仲良しクラブではない」 「現場の甘えにつながるのではないか」
という声もありそうですが、このやり方が成功していることは、大分の昨年の好成績を見れば
明らかですね。
では、シャムスカ氏はブラジルでも、このやり方でチームを作ってきたのか、というと、どうやら
違うらしいのです。
*これは日本の文化に合わせたマネジメント・スタイルである
>日本で仕事をしていく上で、一番大切なのはやっぱり精神的な部分だね。
選手のメンタル面には常に気を遣っている。日本では、選手に対して過大な要求をするんじゃ
なく、モチベーションを高める方がよい結果をもたらしてくれるということを、私はここで学んだ。
そういうやり方が日本ではよい結果をもたらすんだと。
(09年4月号の「Number」のインタビュー記事より抜粋)
同氏の最大の特徴は「引き受けたチームの既存戦力で最大限の効果を発揮させる」ことだそ
うだ。大型補強でスター選手を集めるスタイルではなく、この国の風土をよく理解し、今いる選
手のモチベーションを高めることで、パフォーマンスを最大化するマネジメントスタイルとのこと。
日本のビジネスにおける組織運営においても、この日本人の気質や特性を踏まえたマネジメ
ント・スタイルは大いに見習いたいものです。
* (余談) サムライジャパンと星野ジャパンのリーダーシップの違い
話しは変わりますが、今回のWBC、とても感動しましたね。
選手が、一様に「楽しかった」と言っていたのが印象的で、こうしたコメントを最近耳にすること
がなかったせいか、とても新鮮に感じました。
今回、原監督は大きく株を上げましたが、選手のモチベーションを最大限に引き出す点におい
ては、シャムスカ監督に通じるものがあったように思います。
私がテレビから見てとれた「原監督のマネジメント・スタイル」は、次のとおりです。
「底抜けに明るい」
(指揮官は、悲壮感を漂わせない)
「サムライという皆が共鳴できる理念を掲げる」
(海外から畏怖されるサムライが負けるわけにいかない、という気持ちの醸成)
「選手を信じて任せる」
「現場目線で仲間の一員」
(上から目線ではない)
一方、北京オリンピックの星野ジャパンはどうだったでしょうか?
これも一方的な私の主観ですが、
「負けられないという緊迫感が漂っている」
「監督は上、選手は下という関係」
「現場に任せるよりは、監督が自分で決める」
「ハートを熱くする共有理念がなかった」
(“金メダルを目指す”だけでは、「売上目標○×億円」と同じく燃えません)
こんな風にみえました。
ちなみに岡田ジャパン(サッカー)も同じ印象です。
こうしたリーダーの下では、選手は本来の力を発揮できないものなのかもしれません。
現場の創造力を最大限に発揮する組織。
ビジネスのみならず、サッカーにも野球にもあるものです。
みなさんは、どのように感じましたか?
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