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「見える化」したのに情報を使おうとしない社員たち

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験

 ある会社で、社内の各所に散在している様々な情報を取りまとめ、活用できるようにしようという「見える化」プロジェクトを実施した時のことです。


 そもそもの発端は、組織調査を行った際に、社員から「社内にあるはずの情報が一元化されていないので使えない」「情報開示が適切でない」「単純な連絡事項さえ伝わってこないことがある」「営業状況など管理情報の開示が遅くて判断に支障がある」など、社内の情報開示の仕方や内容、共有方法などに問題があるとの指摘が数多く出されたことからです。

 これに対処しようという主旨で立ち上げられたのが、社内の「見える化」プロジェクトでした。


 管理部門を中心とした少人数のプロジェクトでしたが、定常業務の合間を使って社内各所から意見を聞き、情報を取りまとめて開示する仕組みを徐々に整えていきました。

 仕組みそのものの出来や整理された情報を見る限りはかなり頑張って作り、それなりに利用価値と思えるものでした。


 ただ、その後の活用状況というと、当初からあまり活発とは言えない状況でした。そもそも社員の要望から始まったことで、特に管理職からの指摘が多かったはずですが、その当事者の動きがよくありません。どちらかといえば、新しく入社してきた人や若手社員は仕組みや情報を積極的に使おうとしているのに対して、本来利用する機会が多いはずの管理職たちが、今までのやり方を変えようとしません。

 それなりに投資もしている中で、残念ながら目に見えた成果が出ていません。


 管理職の何人かに話を聞くと、「自分の手元にある情報だけで困ることはない」「情報が多少遅くても問題はない」などといい、中には「そもそも共有されている情報の使い道がわからない」などという者もいます。


 見える化がうまく機能しない場合、システムの使い勝手や情報自体の利用価値が低いなどという問題が見られますが、こちらの会社を見ていると、本来確認すべき情報を見る習慣がありません。アバウトな情報による雑な判断で仕事を進めることに慣れてしまっています。

 いろいろ苦情を言っていたにもかかわらず、いざ情報が手に入るようになると、実はその使い方を知らなかったり、情報自体に興味がなかったりしたわけですが、これはシステムや情報の質ではなく、利用する人の情報活用スキルの問題といえます。


 その後この会社では、報告書式や管理帳票などを「見える化」した情報とリンクさせ、システムを利用せざるを得ない仕組みにすることで徐々に仕事の仕方が変わり、情報を活用した迅速で正確な判断がされるようになっていきました。


 情報を「見える化」していて、その気になればいくらでも活用できるにもかかわらずそれをしないのは、やはり人間は慣れた環境が一番楽だからです。仮にそれが非効率であったとしても、変えることを避けたがり、変えずに済む方法を考えるでしょう。「見える化」は自分たちから言い出したことにもかかわらずそんな状態でした。


 システム化や見える化の目的は、業務効率を上げて業績を伸ばすためであり、それは現状を変えていかなければ達成できません。本人の意思だけで自律的に変われば良いですが、それはなかなかできることではありません。

 この会社は使用を強制するような取り組みをしましたが、人の行動を変えるのはそれほど難しいということです。あらためて組織変革の難しさを感じます。



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