どんどん増える「コミュニケーションツール」を使い分ける難しさ
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少し前に見かけたことですが、夕方のあるカフェでのこと、比較的すいた店内で、隣にいた若いサラリーマン風の男性が、いろいろな会社に何本も電話をしています。
取り次ぎを求める相手はほとんどが社長ばかりですが、次から次へとかける先で取り次いでもらえることがほとんどありません。不思議な感じがして見ていたところ、ようやく取り次がれた一件に話している内容は、人材サービスのセールスでした。どうもリストを見ながらテレアポをしていたようです。
そんな仕事をカフェのような場所でやってしまうこと自体の問題は感じますが、それはひとまず置いておいて、テレアポというのは、これまではリストが見られる社内でしかできなかったことですが、今は社外でもリストにアクセスできて、場所を問わずに自分の都合でできるようになっているということです。
それと同時に感じたのは、多くのコミュニケーションツールがある中でも、「やっぱり営業はなんだかんだ言っても電話なのだ」ということでした。
これは私も経験したことですが、何度も何度も営業電話をかけてくる会社の商材が「ウェブマーケティング」だそうで、「自社のマーケティングはウェブではやらないのだ」という笑い話のようなことがあります。
自分にとって不要な営業電話がうれしい人はいるはずもなく、そんな一方的なアプローチを嫌う傾向は年々強まっているように感じますが、ではメールや広告といった他の方法でうまくいくかというと、それだけではなかなか成果につながらないのでしょう。物が売れない時代では、結局は直接話してプッシュ営業ができる電話が中心になってしまっているのかもしれません。ただ、私はかえって顧客を遠ざける要因になっているのではないかと心配してしまいます。
これとは反対に、社内のコミュニケーションが、なんでもかんでもメールに置き換わっていることを問題視する話が少し以前にありました。隣の席同士でもメールでやり取りしていて直接話そうとしない、それはおかしいという批判的な意見です。
ただ、ここ最近はこういうことをまったく言わなくなりました。最大の理由は、コロナ禍でリモートワークが当たり前になったことですが、それ以前からも、メールを使うメリットが共有されてきたことや、適切な使い方がされるようになってきたことがあります。
私も仕事上のやり取りで基本的なことはメールが中心、それ以外にもショートメールやメッセンジャー、ライン、その他のチャットツールなどを使い分けます。電話は自分からの発信では必要最小限です。
その理由は、やり取りがすべて記録に残って、“言った、言わない”の話になったり、忘れてしまったりということがきわめて少なくなるからです。メールの洪水に陥りかねないので、読み飛ばすものも相当ありますが、やり取りの経緯が後々まで確認できることは、仕事を進める上では重要です。
そんなことを踏まえて、所要時間や情報共有する人数や、伝えることの量や内容によって、いくつものツールを使い分けています。
インターネットがなかった時代は、「郵便」「ファックス」「電話」「会って話す」くらいしか選択肢はなかったわけですが、そこに「メール」が加わったのを始まりに、機能や用途の異なる様々なコミュニケーションツールが出てきました。それぞれ使い勝手には特徴があり、これからも新しいものがどんどん出てくるでしょう。
その一方、若い人たちの間でも「手書き文字が温かい」「気持ちが伝わる」などと言って、手書きの手紙を写真で撮ってメールで送るなど、今と昔が融合したような使い方もされていると聞きます。
ビジネスの場では、コミュニケーションツールが多くなりすぎて、使い分けが難しくなっていることは確かです。そのせいで、特に「デジタルが苦手」という人たちは、先入観や食わず嫌い、リテラシー不足といった様々な理由で拒否していることも多いのかもしれません。
ただ、これからの時代はそれでは損をしてしまうことが多いように思います。
効率的に仕事をするためには、どんなものでも「新しいものはとりあえず使ってみる」ということが必要ではないでしょうか。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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