日経記事;『富士通、早期退職3031人 今期、関連費用650億円計上』に関する考察 - 新規事業・事業拡大全般 - 専門家プロファイル

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日経記事;『富士通、早期退職3031人 今期、関連費用650億円計上』に関する考察

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経営戦略 集中と選択;事業撤退

皆様、

こんにちは。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

3月9日付の日経新聞に、『富士通、早期退職3031人 今期、関連費用650億円計上』のタイトルで記事が掲載されました。

 

本日は、この記事に関して考えを述べます。

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『富士通は8日、本体と国内グループ会社で募集した早期退職に過去最大規模の3031人が応募したと発表した。国内従業員の約4%にあたる。2022年3月期の連結純利益予想も前期比21%減の1600億円と従来予想を450億円引き下げた。退職金の積み増しなど関連費用を計上し、1%増とする従来予想から一転して減益となる。。。』

 

富士通の今までの主要な事業モデル(ビジネスモデル)は、顧客顧客からシステム開発を請け負うことと、メインフレームの販売でした。

 

富士通は、ここ2~3年の間に、既存ビジネスモデルについて、大規模な変革を行っています。

 

富士通の大規模改革の背景にあるのは、国内外企業による多数のデータセンター設置によるクラウドサービスの急拡大と、システム開発の請負ビジネスの採算低下です。

 

富士通は、2022年2月に、2030年度(2031年3月期)末にメインフレームの製造・販売から撤退することを表明しました。

 

富士通のメインフレームは、アマゾン、マイクロソフト、グーグルやなどが提供するクラウドサービスと勝負しても勝てないと判断されたと推測します。

 

企業がクラウドサービスを利用する最大のメリットは、自社でメインフレームやサーバーを管理する必要が無いことです。

 

また、富士通は、システム開発の請負ビジネスからも撤退し、データの活用や新規事業のためのシステム提案などのコンサルティング機能をもつ、ソフトウェアオリエンテッドのビジネスモデルに変化しようとしています。

 

これは、自治体や企業が今後、DXを積極的に行って、新サービスや新規商品の開発・実用化を進める状況に移行しつつあることによると考えます。

 

私は、この富士通の既存ビジネスモデルを廃棄して、新規ビジネスモデルに移行する決断を行ったことに注目しています。

 

富士通が新規ビジネスモデルで勝ち組になるためには、「能力のあるソフトウェアエンジニア」を中核にする事業体制が必要不可欠になります。

 

「能力のあるソフトウェアエンジニア」は、人財です。

 

富士通は、最近、多くの働き方改革を実行しつつあります。富士通は、2020年7月にニューノーマル時代における新しい働き方のコンセプトとして「Work Life Shift」を発表しました。その後、富士通は2021年10月、「Work Life Shift2.0」を発表しました。

 

富士通によると、「Work Life Shift」は、「仕事」と「生活」をトータルにシフトして働き方を改革しようというもので「Smart Working」「Borderless Office」「Culture Change」の3つの軸で構成されています。

 

Smart Workingは、新型コロナウイルスの影響拡大下で定着した、テレワークが中心の働き方であり、オフィスへの出社との組合せによるハイブリッド型になっています。

 

富士通は、多くの社員がテレワークを希望していることから、採用しました。Borderless Officeは時間と場所の制約から解放するとしています。

 

現在、多くの国内企業は、メンバーシップ型雇用を採用しています。メンバーシップ型雇用は、雇用者や上司などが、従業員に臨機応変に仕事割り振る雇用形態です。課やチームに与えられた仕事を行うやり方です。

 

このメンバーシップ型雇用は、新卒一括採用・終身雇用・年功序列の仕組みが前提になります。今の日本では、この前提が崩れつつあります。

 

欧米企業では、ジョブディスクリプション(職務記述書)によって、担当職務とその成果が決められているジョブ型雇用が採用されています。

 

富士通は、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に変更しつつあります。富士通は、上記しましたように、「能力のあるソフトウェアエンジニア」を中核にしようとしています。

 

能力のあるソフトウェアエンジニアは、ジョブ型雇用で雇うことにより、彼らの専門的な職務内容と期待成果を明確化して、働く場所や勤務時間などの制約を低くすることにより、柔軟な働き方ができる制度を整えることで働くモチベーションを最大化できます。

 

また、テレワークには、日本のメンバーシップ型雇用が馴染まないです。

 

以前、私が勤務していた企業には、ソフトウェア開発部隊に多くのSEと称される人がいました。

 

私がこのソフトウェア開発部隊と共に働いたときに、この社内SEの多くが、プログラミング未経験であり、主に下請のIT企業に対するマネージメントやプロジェクトの進捗管理を行っていたことを知りました。

 

多くの社内SEは、Excelを開いてスケジュール管理などを行っていたことは、驚きでした。

 

多分、システム開発を請け負っていた富士通も、似たような状況であったと、推測します。多くの場合、国内の大手IT企業は、請け負ったシステム開発を、多くの下請けITベンダーに開発依頼を行います。

 

もし、社内のソフトウェアエンジニアが、中核となってソフトウェア開発を行う必要が無ければ、「能力のあるソフトウェアエンジニア」は育っていません。

 

富士通の新しいビジネスモデルは、多くの「能力のあるソフトウェアエンジニア」を必要としますので、ソフトウェアエンジニアの総入れ替えが必要になります。

 

本日の記事は、富士通のソフトウェアエンジニアの入れ替えに関する動き方の一環として捉えています。

 

私は、富士通の経営環境や事業環境に対する認識と、解決策の実行のやり方を、合理的と捉えています。

 

富士通の競合企業は、米大手IT企業となります。富士通が米大手IT企業と競争するとき、「能力のあるソフトウェアエンジニア」を確保しつつ、より一層オープンイノベーション;事業連携(アライアンス)を積極的に取り入れて、激変する事業環境に柔軟に、かつ、しっかりとしたやり方で実行することが必要不可欠になります。

 

今後の富士通の状況に注目していきます。

 

よろしくお願いいたします。

 

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

 

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