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死刑宣告者の心構え(その3)−裁判官の心理

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死刑制度

 壇上の男が前に進み出て、両手を上にかざして叫んだ。
 …死者よ。天上の死者よ。殺人者に殺された者よ。死刑に処せられた者よ。冤罪で死刑になった者よ。照覧あれ。
 私は今この被告人をそちらに送り出すことを決断し、死刑を宣告します。私は、裁判を通じて、被告人が本件犯行の犯人であることを確信しました。彼の犯行は、あまりに酷く、我々の人間性に対する信頼を裏切りました。我々は、もはや彼を仲間と認めることはできません。彼は、その命をもって、その罪を償い、地上に残された我々に、人はどのように生きるべきかを示し続けます。そのとき、我々は、彼を再び我々の「仲間」として迎え入れることでしょう。
 願わくは、私のこの決断が、復讐の連鎖を断ち切り、人々の精神的紐帯を再び甦らせることを。そして再び平穏が訪れることを。…
 男は跪き、頭を垂れた。
 その男とは、この私です。平成16年4月28日、さいたま市内で、日弁連、関弁連、埼玉弁護士会の共催で、「死刑の存廃」について、シンポジュームが開催されたときの一こまです。私も、死刑存置論の立場からパネリストとして出場し、死刑判決を言い渡す裁判官の心理描写として、このパフォーマンスを演じました。日弁連のホームページ(www.nichibenren.or.jp )で、裁判員制度のもとでは、裁判官だけの問題ではなく、重要な視点であると紹介されました。
 死刑制度の存廃問題に関連して、死刑を言い渡す者の心理、気持ち、心構え、については、今まであまり議論されてきませんでした。死刑判決を言い渡す裁判官のプレッシャーは相当なものであると想像されます。我々は、今まで、この過酷な課題を、ひとり裁判官に押し付けてきたのです。

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