- 小笠原 隆夫
- ユニティ・サポート 代表
- 東京都
- 経営コンサルタント
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気づかないうちに陥ってしまう「内向き思考」
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少し前の話ですが、あるテーマの公開セミナーに参加したときのことです。
参加者は十数名程度のこじんまりしたセミナーでしたが、私以外の参加者はほぼ全員が企業に属している人たちで、同じ会社から何人かで参加しているところもありました。
終了後にちょっとした懇親会をやるということだったので、私は残って待っていましたが、参加者の半分くらいは懇親会には参加せずに帰ってしまいました。残ったのは十名を欠けるくらいの人数です。
さらにその会では、自分から名刺交換をしたり、面識のない人と会話しようとする人がほとんどいません。一緒に参加した内輪の社員同士で話しているか、一人黙って食事をしているか、手持ち無沙汰にボーっとしているかのどれかです。
私は仕事柄で、異業種の交流会にはときどき参加しますが、そういう時の周りの積極的な様子に慣れてしまっているせいか、ずいぶん拍子抜けした感じです。
近くにいた人に声をかけてしばらく話していましたが、わりと著名な企業の人事部門の人で、帰り際には社交辞令もあるでしょうが、「良い情報交換ができて良かった」などと言っていました。
このときに思ったのは、この場に参加した人たちは、特に知らない人と交流したいとも、そこに価値があるとも思っておらず、利害関係がありそうにない人とはあえて付き合う気はないということです。
確かに自社の商売にすぐにつながることは少ないでしょうし、個人的な人脈が仕事上で必要な場面もそれほど多くはないでしょう。
しかし、その中には何人か、利害を超えた幅広い交流がいつか自分に帰ってくることもあると考えている様子の人がいます。そういう人たちは、特に面識がない相手とも積極的に交流をしています。
ただし、そういう人は営業職など常に社外と接点がある人や、上級の部長や役員クラスなど、いろいろな場で多くの人と接してきた経験のある人たちが多いようでした。
また、こういう場では消極的な人たちも、例えば自社が主催した交流会や展示会などの場であれば、そこに集まるのは関係者かお客様なので、たぶん積極的に交流しようとするでしょう。
私が思ったのは、組織に属している人ほど、誰かから指示されたり、直接仕事につながったりすることには自分から行動するものの、そうでければ本人が気づかないうちに、いつの間にか「内向き思考」になってしまっていて、自覚がないまま社外の事情や社員以外に人に対して、興味を持たなくなっているのではないかということです。
そういった姿勢は、その人の視野を狭めてしまい、何でも内輪だけで解決しようとして、結果的に非効率であったり、内部的な不正の温床になったりします。
最近は「オープンイノベーション」など、社内資源ばかりにこだわらず、他企業や団体との連携を積極的に活用することで、研究開発や製品化を加速する動きが活発になってきています。
世の中が外向きに動き始めている中で、本人の自覚の有無にかかわらず、組織に埋没して「内向き思考」になっていることは、これからの時代を考えると結構大きな問題です。
些細な出来事から感じたことですが、「内向き思考」に陥らない、陥らせない方法を、もう少し意識しなければならないと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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