日本人はうまくいくほどネガティブになるという話
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あるテレビ番組での内容ですが、「うまくいくほどネガティブな感情を持つのは日本人だけ」なのだそうです。
例えば「勝ってカブトの緒を締めよ」などといい、成功したり戦いに勝ったりしても気をゆるめず、さらに心を引き締めて謙虚になるようにと戒められます。
日本人の感覚からすると、それは良い心がけで好ましいことのように思いますが、勝っていて昇り調子の時にさらに上を目指そうとしない、うまくいっている時にそれ以上うまくいくことを考えないと見れば、それをネガティブと言われても仕方がないのかもしれません。
番組では、日本人がなぜこういう思考パターンを取るのかという理由も語られており、それは「災害多発の国土であったから」とのことでした。常に災害が起こった時のことを考えて、その準備を怠らなかった人が生き延びてきた民族であり、それがDNAに刻み込まれてきているために、他国の人からすると異質な考え方を持つようになったとのことでした。
このように「常に先のことを心配している」という話を聞くと、消費が伸びないとか投資が増えないとか、一般の経済活動にもつながっている感じがしますし、喜びの表現が控え目だったり、褒められても素直に受けとめられなかったり、いい話にも何か裏があると思ってしまうようなところがあるのは、そういう深層心理が影響しているのだと妙に納得してしまいました。
ここで思ったのは、かつての終身雇用、年功序列、退職金といった日本の人事制度は、ほとんどが「先の心配を減らす」という施策だったことです。それが日本人の心理にフィットしていたということではないでしょうか。
これらの制度は、生み出した成果とは関係がないところで処遇が決まる部分があるので、右肩上がりが続いているような企業でなければ維持しづらいですし、資本主義的な競争原理の考え方とは相いれないところがあります。
そんなことから、企業の人事制度は成果主義であったり、時価精算の考え方を強めたりという流れがありますが、日本人のDNAとしてそういう変化を「将来不安の増加」と感じやすいのだとすれば、すぐに節約、倹約、貯蓄で備えようとしてしまうのは、当然の防御行動ということになります。
「将来不安」の中には、仕事への不安、収入不安、健康不安、老後の不安、その他いろいろな種類があります。経済の活性化、景気回復のためには、「将来不安の軽減」が必要だと言われ、海外事例もいろいろ持ち出されますが、日本人のDNAに過剰な将来不安があるのだとすれば、かなり大胆な働きかけをしなければ、なかなか変わらないように思います。
あくまで個人的な意見として、やはり失業、医療、貧困といったセーフティーネットを、さらに整備していくことが必要になるのでしょうが、それは国をはじめとした公共の政策だけでなく、企業でも個人でもできることはありますし、もっとポジティブに考える思考の転換もあります。
「勝ってカブトの緒を締めよ」と似たことわざは海外にもあるようですが、勝った自分を褒めて良い気分を満喫することや、これから先にはもっと良いことがあると希望を持つことは、考え方次第で可能です。もう少し気楽にそんな考え方をしても良いのかもしれません。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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