ネット株取引で11億円所得隠し - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

平 仁
ABC税理士法人 税理士
東京都
税理士
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ネット株取引で11億円所得隠し

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雑感 業務その他
確定申告期限が迫ってきたこの時期に、警告の意味を込めているような
気がする脱税事件が摘発されました。

10日13時16分asahi.com記事はこう報じた。

インターネットの株取引で得た約11億5千万円の所得を隠し、所得税
約8千万円を脱税したとして、神戸地検特別刑事部は10日、兵庫県豊岡市
中央町の電器店経営、安田年男容疑者(71)を所得税法違反(脱税)容疑で
逮捕した。
地検は同日、大阪国税局と合同で安田容疑者宅を家宅捜索した。

捜査関係者によると、安田容疑者は04〜06年、インターネットの株取引で
11億5600万円の売却益を得たのに、本業の電器店の赤字分だけを申告して
この売却益を隠していた疑いがある。
売却益は次の取引の原資に充てていたという。

安田容疑者は約30年前から株取引を本格的に始め、01年以降は証券4社に
それぞれネット口座を開設。
この際、売却益について源泉徴収を受けない「一般口座」を選択したため、
本来であれば自分で税務申告する必要があったが、それを怠っていたとされる。

安田容疑者は国内企業の株式約480銘柄を保有していた時期もあり、
日中は主にパソコンに向かい、株の売買だけで生計を立てていたという。
売却益のほかに、株式を所有している企業からも年計数千万円の配当を
受け取っていたとみられている。

株取引による所得をめぐっては、大阪国税局が管内の6府県で昨年6月までの
1年間に計5365件の税務調査を実施。
うち約8割にあたる4106件、総額177億6800万円の申告漏れを確認している。

安田容疑者の電器店はJR豊岡駅近くの商店街にあり、1階が店舗、
2、3階が住居となっている。
安田容疑者は午前9時すぎ、神戸地検の係官に任意同行を求められて自宅を出た。
近所の男性によると、安田容疑者は電器店を30年以上経営しているが、
派手な暮らしぶりをしているようには見えなかったという。
男性は「(安田容疑者が)株取引をしていることは有名だった。
かなり大きな額を扱っているとは聞いていたが、まさか脱税の容疑を
かけられるなんて」と驚いていた。




株取引で損をした方が申告の相談にこられるのはよく見かけますが、
儲かってどうしよう、という相談はあまり見受けられないように思います。

今回の摘発は氷山の一角だと思いますが、結構申告されていない方も
いるのかもしれません。

1ヶ所の証券会社との取引でかつ特定口座のみで株式投資をされている方は
証券会社で源泉税の天引きをしていますので、課税漏れの危険性はないですが、
複数の特定口座を使用されている方や、特定口座を使用されていない方の
場合には、確定申告の義務があるのですね。

また、証券会社が税務調査を受ける場合には、手数料収入の調査により、
その証券会社で取引されている方の取引データは把握されますから、
3年分の調査の結果を受けて、該当する取引先に反面調査に入ると、
その方の申告漏れが発覚するという図式になります。

株取引の調査で税務署が来るときには、この理由から、ほとんどの場合、
既にデータを持っていて、それを確認に来るだけというケースが多いですね。

そういう意味では、なかなか隠し通せるものではありません。


税務署といえども、全ての取引先に税務調査に入るだけの人員も時間も予算も
ありませんので、金額的に大きいだとか、悪質なケースだとか、様々な
基準によって調査案件を選択しています。
ただ、無作為に案件を抽出する場合も多いですね。

たまたま逃れることが出来たとしても、長年続けていれば、調査案件に
選ばれるのも当然でしょう。


ただ、時事通信社10日17時30分記事によると、容疑者は
「そんなに所得はなかった」と話しているという。

しかし、確信犯として申告してこなかったのであれば、脱税犯であることは
間違いないのであり、所得額が異なるのであれば、それを反証することが
出来るのは自分自身しかいないのですから、課税庁側が主張する額を
覆す証拠を示すべきであろうし、示さなければ裁判での逆転は望めまい。

もし反証できるとすれば、脱税する意思の下に申告してこなかったことは
明らかであり、金額による量刑の違いを期待できるかどうかであろう。



課税庁側が検察の捜査指揮に協力することが不可能なこの時期に
検察が摘発に動いたというのは、課税庁側の意向が反映されているように思う。

脱税すればこうなるよ、という警告効果はこの時期だからこそ絶大である。

我々税理士には調査権がないので、税理士が把握できなかったケースも
結構あると思います。

私としても、お客様に隠されてしまえば、対税務署で闘いようがありません。
ウソをつかれることが一番困りますね。

適正な納税のためにも資料は余さず提供して頂きたいものです。