お笑い芸人でなおかつIT企業の役員でもある厚切りジェイソンさんの話で、ちょっと興味深いと感じたことがありました。
ある雑誌読者からの相談ということで、「業務に支障があるほどではないが、いつも遅刻する部下をどう扱えばよいか」との質問に対して、「業務に支障がないなら別に構わないのではないか。日本人はスタート時間には厳しいがエンド時間にはルーズだ」と言っていました。
言われてみれば確かにその通りで、例えば、朝の始業時間には二日酔いでも何でも、とにかく時間に遅れずに出社するのが良いこととして扱われますが、終業時間については決まっていないがごときの会社がたくさんあり、残業過多や長時間労働が当たり前となっています。一斉に始めることにはこだわりますが一斉に終わろうとはしません。遅刻は非難されますが残業は非難されません。
しかし、終わる時間のすべてに関してルーズかというと決してそんなことはなく、納期やその他の期限など、対外的な仕事の終わりにはこだわります。海外の建築現場などでは工期の遅れが良く言われ、中には本当に間に合わないものもありますが、日本ではほぼそういうことはありません。
また、他国では仕事が終わっていなくても、定時になれば帰ってしまう人が大勢いるという話をよく聞きます。自分の終業時間には厳格ですが対外的な納期にはルーズということになり、このあたりは日本人の感覚とまったく違っています。
こういうところに日本人の持つ職業観がはっきり現れていて、外向きには絶対に期限を守る責任感があるものの、内向きには時間を気にせずハードワークを課したりします。他の国ではもっと自分のプライベートな時間を重視していて、それに反してまで期限を守る必要はないと考えているのでしょう。
「日本人は時間に厳しい」と思っている人は多いですが、仕事を終える時間にはルーズだと言われると、まったく返す言葉がありません。「時間に厳しい」という意味を自分たちの価値観だけで解釈して、勝手に思い込んでいただけだと感じます。
納期を気にしないような働き方には共感できませんが、「終わる時間にルーズ」という指摘には一理あります。本当の意味で「時間に厳しい」とはどういうことなのか、自分たちの働き方を今一度考えて見直す必要がありそうです。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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