米国特許判例紹介:永久差し止めの要件(第3回)  - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:永久差し止めの要件(第3回) 

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米国特許判例紹介:永久差し止めの要件
 〜eBay最高裁判決 4 Factorsの適用基準〜(第3回) 
河野特許事務所 2009年3月18日
執筆者:弁理士  河野 英仁

3.CAFCでの争点
(1)過去他社にライセンスを付与していることが、第1要件(回復不可能な損害の存在)及び第2要件(法による救済が不十分である)に影響を与えるか?
 原告は他の大手2社に対し、既に444特許に対するライセンスを付与している。この場合に、原告に回復不可能な損害が存在していると言えるか、救済が不十分と言えるか否かが争点となった。

(2)第3要件(両当事者に生じる不利益のバランス)を判断する際の基準
 両当事者に生じる不利益のバランスを考慮する際に、どの範囲まで不利益を考慮すべきかが問題となった。

(3)イ号製品が、原告特許よりも優れている場合に、第4要件(公衆の利益が害されないこと)をどのように判断すべきか?
 本事件においては原告の444特許に係る製品はスクリューが外れやすいという問題があった。イ号製品にはこのような問題が生じない。イ号製品が、原告444特許に係る製品よりも優れている場合、第4要件の判断にどのような影響を与えるかが問題となった。

4.CAFCの判断
(1)既に他社にライセンスを付与していても、第1要件及び第2要件を満たす
 被告は、原告が大手2社に対し444特許に基づく特許権侵害訴訟を提起し、大手2社にライセンスを快諾したということは、十分なライセンス費を得ていることを意味するので、そこに回復不能な損害があったとは言えず、また法による救済が不十分であるとは言えないと主張した。

 CAFCは被告の当該主張を認めなかった。CAFCは大手2社から受け取った合理的ロイヤリティにより十分な補償を得たとも考えられるが、逸失利益など合理的ロイヤリティでは補償しきれない回復不能な損害を生じさせる可能性があると述べた。

 また、過去に他社にライセンスを付与していたとしても、新たな競合他社の市場参入により、それまで存在しなかった回復不能な損害を生じる可能性がある。以上のことから、CAFCはeBay最高裁判決の第1要件及び第2要件を満たすとした地裁の判断を支持した。

(2)第3要件における当事者の範囲は原告及び被告間に限る。
 被告はイ号製品が永久差し止めされた場合、被告、被告の顧客及び患者の全てが苦難に直面すると主張した。

 これに対し、CAFCは第3要件「両当事者に生じる不利益のバランス」における「両当事者」は「原告」及び「被告」を意味し、被告の顧客及び患者の不利益は考慮されないと判示した。

 またCAFCは、被告企業は多彩な商品を扱う世界最大規模の整形外科用インプラント企業であり、その一方で、原告企業は444特許に係る製品を主力製品とし、総売上は被告企業に比べて十分少ない点をも考慮した。

 以上の事実に基づき、CAFCは、原告及び被告間の不利益を考慮した場合、原告の不利益が大きく、第3要件を満たすと判断した地裁の判断に何ら誤りは存在しないと判断した。

(3)イ号製品が原告特許よりも優れていることは理由とならない
 被告は444特許に係る原告製品にはスクリューが外れやすいという問題がある点を指摘した。これに対しイ号製品は当該問題を解消することができ、原告特許に係る製品よりも優れている点を主張した。そして、スクリューが外れることのない優れたイ号製品の差し止めを認めることは、公共の利益を害することになると主張した。

 しかしながらCAFCは原告の444特許に係る製品はスクリューキャップを取り付けることにより、当該問題を解消しており、さらに、他の大手2社から代替製品が販売されていることから、何ら公共の利益を害するものではないと判示した。

(第4回に続く)
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